ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関 口 紘一 text by Mieko Sasaki 
[2007.05.10]
北からは桜、南からは<夏日>の声が聞えてくると、 ユーラシア大陸に沿って延びる日本列島の位置を改めて感じます。特に、私はさらに西南の大陸の街、 上海を旅して帰って来ましたので、桜花爛漫の便りは、まるで前世の出来事のように想えてしまいます。

多彩に展開するベルギー・ダンス、ローザス『ディッシュ』

 ベルギー・ダンスの花々があちらこちらで咲き競っている。
 まずは、ローザスの『ディッシュ(ザ・セカンド・パート・オブ・ナイト)』。インド音楽のラーガとジョン・コルトレーンの『インディア』を使い、 3人のダンサーが踊る5つのシークエンスからなる舞台である。
 振付は、ラーガのパートはダンサーとしても踊っているアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルで、『インディア』にはバルセロナ出身の サルヴァ・サンチスが振付けている。さらに、トリシャ・ブラウンに学び、今はローザスで踊っているマリオン・バレスターも加わって3人で踊った。
  背景に裸木で組んだ棹に、淡いベージュと黒の大きな更紗を吊し、ダンスの流れと共に上げたり下ろしたり、更紗の色を換えたりする。これは下手に控えたス タッフが、麻紐のように見えるロープを手作業で操っているのが垣間見えるようになっている。舞台の中央は白い床になっているが、そこにはうっすらと細かい 砂が撒かれていて、ダンサー衣裳の裳裾が翻ったリすると、幽かに薄い煙が見える。
 ダンサーたちは、登場する時からタオルを持ち、時に汗を拭ったり、あるいは退場したダンサーが舞台に残していった シャツに着替えて踊ったリする。特別な舞台空間ではなく、日常の時間の中で踊っているダンスということか。 木、布、砂で構成した舞台のヴィジュアル、現実に生きるダンスの踊り方といったものにインドが映されていて、 現代の西欧の文明、あるいはダンスに対する批評がなされている。舞踊家としては、率直なインドのイメージと 自由なダンスを提出しただけなのかもしれないが、観客には一種のヒーリングの空間を提供しているのである。
 ダンスもケースマイケルのフレーズはゆったりとして流れのあるものだったが、サンチスのやや速い動きとも 上手く調和していた。じつに繊細な動きの構成である。ダンスの詳細な分析・解説はプログラムに掲載されているサラ・ヤンセンの一文が、 ほとんど語り尽くしているので、ぜひご参照されたい。


(4月11日、彩の国さいたま芸術劇場 大ホール)