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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.04.10]

谷桃子バレエ団の『シンデレラ』

 もうひとつのプロコフィエフの曲によるバレエは『シンデレラ』である。
谷桃子バレエ団の『シンデレラ』は、ロシアのザハーロフ版に基づいたS.メッセレルの演出・振付を、さらに谷桃子が再演出・振付けたものである。
今回は、この作品のひとつの見所である継母と姉と妹のキャスティングを、新たに継母・岩上純、姉・日原永美子、妹・朝枝めぐみとしている。
三人とも初役への挑戦だったが、岩上の継母が際だって上手かった。普通の女性以上に振舞・仕草が女性らしく可愛らしいのだが、じつはかなりの意地悪。シンデレラのごく些細な失敗をビシビシと責め、厳しい罰を与える。マイムの動きが音楽にマッチしている。

 

朝枝めぐみ(妹)、日原永美子(姉)、
岩上純(継母)


高部尚子(シンデレラ)

前田新奈(仙女)

  プロコフィエフの『シンデレラ』の曲は、非常に起伏に富んでいて、かなり戯画的なメロディである。その音そのままを登場人物が踊ると、どうもあまりおもし ろくないし、しらけることさえある。しかし谷桃子版では、道化が登場して戯画的な激しい音を踊り、ほかの登場人物との緩衝になる。そして、全体に芝居ふう のシーンを多めに使い、非常に上手くプロコフィエフの曲とダンスを調和させているのに、大いに感心した。かつてみたどのヴァージョンよりも音楽と動きが一 致した舞台に思えた。


高部尚子(シンデレラ)、今井智也(王子)
 

舞踏会シーン
 

高部尚子のシンデレラは、もちろん、主役として輝いている。孤独と夢と優しさをじつにバランス良く表現していた。今井智也の王子も爽やかな印象だった。
演出としては、王子が片方の靴の持ち主を探し求めて世界を旅して廻るシーンでは、極端にテンポを上げたり、民族舞踊のシーンでは逆にゆっくりと踊って、王子の焦燥感をくっきりみせるなど、巧みな工夫が施されている。
また、第二幕の王子が初めて登場するシーンは、まず、顔を隠した道化が小走りに王子の椅子に座って見せ、その後、王子が姿を現す。この演出は、じつは最 後のシーンで、王子が探している片方の靴の持ち主は自分なのだが、あまりにみすぼらしいエプロン姿が恥ずかしくて必死で顔を隠すシンデレラの演技と呼応し ている。なかなか手のこんだ、洒脱で高度な演出である。
(3月17日、目黒パーシモン 大ホール)