ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.01.10]

新国立劇場のアシュトン版『シンデレラ』

 フレデリック・アシュトン振付、セルゲイ・プロコフィエフ音楽の全3幕『シンデレラ』は、1987年に英国ロイヤル・バレエ団が初演したもの。新国立劇場では、1999年に初演している。

今回は、英国ロイヤル・バレエのプリンシパル、アリーナ・コジョカルとフェデリコ・ボネッリをゲストに招いて上演された。
アシュトン版は初演の際、アシュトン自身とロバート・ヘルプマンが義理の姉たちを踊って、その絶妙の演技が喝采を浴びた、として有名である。ちょっとシ ニカルでブラックな味が受ける、いかにも英国らしい観客の反応である。ここでは、マシモ・アクリと保坂アントン慶が踊った。

プロコフエフの音楽自体は美しいのだが、その独特のアンサンブルと舞台で踊られるダンスの共振がどうも私にはもうひとつ感じ得ないのである。振付家自身 や名手といわれたダンサーがコミカルな役を踊る、というイベントなしに、義理の姉たちのダンスを観ていいてもあまり感興が沸いてこない。『ラ・フィユ・マ ル・ガルデ』という愉快なバレエを創ったアシュトンの振付は、この作品では成功していないのではないか。『眠れる森の美女』のようなメルヘン世界とややシ ニカルでコミカルな味は相容れないのではないだろうか。
とはいえ、やはり2幕は素晴らしい。ガラスの靴のようにキラキラと光り輝く舞踏会と、12時の時を打つ音が魔法の終りを告げるドラマティックな展開が、 たいへんに印象的である。ただ、ここで登場する道化は、妖精たちの存在と重なり、過剰な感じがした。3幕はほとんどセレモニーだけでやや拍子抜けする。や はり、各国を王子がガラスの靴の持ち主を探して歩く、というエピソードがあったほうがドラマとしては落ち着くと思われる。

コジョカルのシンデレラは言うまでもなく素晴らしい。ボネッリの王子が登場するまではほとんど一人で舞台をもたせた感がある。軽々と見事なバランスの優れたバレリーナである。
(12月15日、新国立オペラ劇場)