ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.01.10]

芙二三枝子の『土面』


『土面』
 現代人は常に喪失感に苛まれていて、気を鎮めて振り返ってみてもいったい何を喪失したのかすら、分からなくなってしまっているのではないだろうか。
芙二三枝子の構成・振付・演出による『土面』は、われわれが喪失して見失ってしまったものを眼前に見せてくれる。生命を育むリズムを刻む太鼓の音や透明 な尺八の音色にのせて、天国に響くような邪気なき鉦の音に誘われて踊る人々の中に、穢れなき生の営為を発見することができる。
共同体を生きる魂のさすらいと休息、そして巫女に導かれて顕われるトランス。身体と心は不可分であり、喜び、怒り、悲しみ、おののき、休息し、やすらぐ。導くのは太鼓であり、尺八であり、鉦であり、それらを複合した音楽である。そしてそこには、そこにこそダンスがある。

 芙二三枝子は、ピカソがアフリカの美術に衝撃を受けたように、岡本太郎が沖縄の崇高な文化を発見したように、 敏捷な縄文人の営みの中に五感の十全な発現を感じた。彼らは自然と魔法に準拠して生活していたのである。天照大御神が籠った石のトビラを開いたように、わ れわれの喪失感を乗り越える力を持ったダンスである。音楽は「日本の太鼓」「諏訪太鼓」三木稔、海童道宗祖、松村禎三、衣裳毛利臣男。
同時に、『響』(構成・振付・演出、芙二三枝子)と『散華』(振付・演出、馬場ひかり)が上演された。



『土面』

『土面』

『土面』