ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2006.12.10]

「ソワレ」SOIREE DE DANSE ROLAND PETIT

 草刈民代が企画プロデュ-スした「ソワレ」が東京にやってきた。9月8日にパリのシャンゼリゼ劇場を皮切りに、上海、台湾、香港を回って東京に到った。草刈のほかに、リエンツ・チャン、アルタンフヤグ・ドゥガラー、ワン・チーミン、リー・チュンのアジア系のダンサーに、ルイジ・ボニーノとレイモンド・レべックが加わった7名のダンサーが、ロ-ラン・プティ作品のアンソロジーを踊るワールドツアー。プティのダンスによって、アジアン・ビューティをフューチャーしようという企画である。

 第1幕は、『ピンク・フロイド・バレエ』のエッセンスを、アルタンフヤグ・ドゥガラー、リエンツ・チャン、草刈民代が踊った。つづいて『マ・パヴロワ』より「タイス」(マスネ曲)。ワン・チーミンとリー・チュンの中国中央バレエ団の中国人カップルが踊った。やや小柄ながらよく鍛えられた実力のあるダンサーで、10年以上パートナーを組んでいるという息の合ったペアである。ジャック・プレヴェールから想を得、ジョゼフ・コスマの「枯葉」を使ったプティの初期作品『ランデヴー』。草刈が女性というものの神秘性を垣間みさせる役に扮した。こうした役柄にも草刈らしさが出ている。
 プティの掛け替えのない理解者、ボニーノは『コッペリア』から、コッペリウス博士と人形のダンスを踊った。かつてプティが日本の舞台でも踊って、観客を喜ばせたシーンである。ボニーノは彼流に、スラップスティック・コメディのタッチで踊ってみせた。再び、ワン・チーミンとリー・チュンのペアが『アルルの女』を踊った。リー・チュンは活気溢れる熱演で会場も大いに盛り上がった。ただ、ヨーロッパ人の喪失感というか、恋愛の感覚と中国人の心のひだには、少し距離があるかもしれない、とも思った。

『ランデヴー』


『ソフィスティケイテッド・レディ』
 第2幕には、新作『神も悪魔もなく』が登場した。ピアソラに認められユーロ・ジャズの旗手ともいわれるアコーディオン奏者、リシャール・ガイアーノの音楽「Chat Pitre」を使った作品で、20世紀初頭に流行したダンスのステップを活かしたものだそうだ。リズミカルな音楽の楽しさと草刈のコケットリーが、ほどよく調和した洒落たダンスだった。
 そしてボニーノの『ダンシング・チャップリン』から、「ティティナを探して」とお馴染みの「小さなバレリーナ」。まさに、ボニーノの至芸とも言える舞台である。現実には生チャップリンは見られないし、生きていたとしてもダンスするわけではないが、ボニーノの姿を借りて甦ってきたのではないか、そんな気持ちになる舞台である。
 ラストは、『デューク・エリントン・バレエ』から「ソフィスティケイテッド・レディ」と「The Opener」。さらにアステアとジンジャー・ロジャースの『トップ・ハット』のオマージュとして振付けられた『チーク・トゥ・チーク』。ジジとボニーノが踊った作品を、ボニーノが草刈をパートナーとして踊った。ボニーノの粋な味と草刈の美しさがうまくマッチした舞台だった。
 この後、「ソワレ」は日本の各都市を巡って上演された。
(11月17日、ゆうぽうと簡易保険ホール)

『チーク・トゥ・チーク』