ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2006.12.10]

篠原聖一バレエ・リサイタル『ロミオとジュリエット』

  確かに『ロミオとジュリエット』の物語はドラマティックである。きらきらと輝くばかりの青春の真っただ中にいる二人が、政治的対立を隔てて出会い、至上の 愛を得るが、対立の中で起きた悲劇によって引き裂かれる。そしてパリスとの結婚を迫られたジュリエットは、乾坤一擲、起死回生のチャレンジに掛ける。筋だ ては整っていた、だがしかし、運命的な行き違いによって、消える必要のない命が落とされる。ジュリエットがもう少し早く目覚めていたら、とか、ロミオに牧 師の手紙が届いていたら、とか。<たら・れば>がふんだんに込められた物語である。
そこで篠原演出は、運命という役を創って登場させ、物語の要所要所に姿を現し、人間の存在を越えた力があることを示唆する。特に、ジュリエットが仮死状 態になる薬を飲むかどうか迷うシーンは、入念に描かれるが、運命は、彼女の苦悩を人間の表情のひとつとしてとり扱っているのである。
終盤の墓場のシーンでは、ジュリエットに策を与えた牧師を登場させ、若い二人を自殺させてしまった運命の悪戯を呪う。黒々とした青春の死体が激しく抗議しているかのようだったが、結局、運命が物語の幕を下ろしたのだった。

オリジナルキャストであるジュリエットの下村由理恵、ロミオの山本隆之は、堂々と落ち着いた踊りで、説得力のある演技を見せた。
三方に対立を表す二色のベルトを垂らし、死刑台のような階段の付いた台を自在に動かして使われるセットも、ドラマに応じてよく機能していた。
(10月26日、メルパルクホール)