ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2006.12.10]

バレエ・シャンブルウエストが新作『ブランカ』を初演

 創作バレエにも意欲的なバレエ・シャンブルウエストが、芸術監督、今村博明と川口ゆり子による新作『ブラン カ』を発表した。これは、二人の舞踊生活50周年を記念する作品でもあった。タイトルはスペイン語で「白」の意味で、氷と雪に閉ざされる北の国が舞台。女 王の求婚者は女王の“氷のキス”を受けることが条件だが、女王を愛する白い亡霊の魔法のため、皆、キスで命を落としている。隣国の王子が、王子を慕う清ら かな侍女の犠牲によりキスに耐え、魔力を解くが、この展開はプッチーニの歌劇『トゥーランドット』を下敷きにしたように思える。こちらの音楽はドビュッ シーの作品で構成されていた。
冒頭で、雪や霧の風景を暗示させる紗幕越しに、雪の宮殿を思わせる白い世界を表出し、女王(川口)に白い亡霊(佐藤崇有貴)が魔法をかける様を幻想的に 描写し、物語の背景を伝えた。舞台は一転して城の外の広場となり、村人たちが活気に満ちた踊りを展開した。南の王子(井上欧輔)の求愛と悲劇的な結果、こ れに続く隣国の王子(今村)の挑戦と、スピーディーな筋運びである。今村が、氷のキスに臨む前に踊ったソロは、燃えるような思いに死への恐怖を滲ませて説 得力があった。川口は、感情を凍てつかせたような冷厳とした佇まいで存在感を示し、魔力から解放された後の今村とのデュオでは、なよやかな体の動きで喜び を伝えた。また侍女を演じた吉本真由美が秀逸で、王子を諌めようとして全身ですがり、自身の血を付けた鏡の破片を手渡して息絶える様は、哀れを誘った。
二幕構成で、よどみなく組み立てられており、ソロや群舞には役柄に応じた工夫がみられた。ただ、第2幕でキスの儀式の前に挿入された村人たちの踊りは、そ れが成功を祈るものだとしても、劇的高揚を停滞させたように感じられた。音楽はドラマに合致した部分もあれば、弛緩させたような所もあり、選曲の難しさを 思わせが、これは、オーケストラの色彩感が今一つだったせいもあるだろう。
(11月11日、ゆうぽうと簡易保険ホール)