ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2006.11.10]

牧阿佐美バレヱ団の『リーズの結婚』

フレデリック・アシュトンが振付けた『リーズの結婚』(フェルディナン・エロールの曲をランチベリーが編曲)は、牧阿佐美バレヱ団の数多くのレパートリー中でも人気の高い作品のひとつである。
とにかく、アシュトン版『リーズの結婚』は、いつ観ても何回観ても楽しめる。オープニングの若いおんどりと四羽のめんどりの暢気な踊りから、エンディン グの誰もいなくなった居間にアランが忍び込んできて、「また、なにをやらかすのか」と観客が注目すると、真っ赤なコウモリ傘を見つけて小躍りするシーンま で、全編がじつにウィットに富んだ軽妙なタッチで、時間のゆっくり流れる田園生活を活き活きと描いて、観客の心を和ます。

たとえば小道具だけをみても、アランと一心同体のこうもり傘はもちろん、色とりどりのリボン、横笛、鎌などの農具、収穫された麦、スカーフや木靴、さら には小さな馬車などが、それぞれ自然に与えられた役割を過不足なく担って的確な効果を発揮しているのは、見事と言うほかない。
リーズは佐藤朱実が可愛らしく軽やかに踊った。マイムも細かい感情にまで気持ちが入っているので、自然に観客の笑いを誘う心の温まる演技だった。コーラ スの京當侑一籠は、小技が少々不馴れだったかもしれないが、大きな踊りを伸び伸びと踊ってみせた。少し細身になったようにも見えた。
シモーヌの保坂アントン慶は、相変わらず芸達者。シモーヌ一人で見せるシーンでも、観客の気持ちを惹き付ける安定感のある演技で好演した。アランの武藤 顕三は、こうもり傘へのフェテッシュな執着も嫌味なく表し、意味のない気恥ずかしさを可愛く見せていて感心した。これからもぜひがんばってほしいダンサー である。
これだけ楽しく、気持ちをリラックスさせてくれるバレエは、他にないのではないか。
(10月21日、ゆうぽうと簡易保険ホール)