ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2006.11.10]

オーストラリアン・ダンス・シアターの『HELD』

 オーストラリアのコンテンポラリー・ダンスの振付家、ゲアリー・スチュアート率いる、オーストラリアン・ダンス・シアターが来日。アデレード・フェスティバルでヘルプマン賞やオーストラリア・ダンス賞を受賞した『HELD』を上演した。

この『HELD』は、ポスト・モダンダンス華やかなりし頃からニューヨークで「ヴィレッジ・ヴォイス」や「ニューヨーク・タイムズ」にダンスの写真を提 供してきたロイス・グリーンフィールドと、実際の舞台上でコラボレーションを展開する。グリーンフィールドはダンスが踊られているステージの上で、観客の 視線を浴びながらシャッターを切る、と同時にその瞬間が巨大映像となって背景のスクリーンに映し出される。
したがって観客は、自分の目で舞台上のダンスを観ながら、グリーンフィールドのカメラ・アイのフレームワークを感じ、クローズアップされた映像も観ることになる。振付家がこの点にどういった趣旨を込めたのか、若干理解しにくい面もあった。

ダンスは、格闘技の動きを短いシーケンス風にまとめて構成したものであった。ハーフスピードのような動きで、バイオレンスやエロティシズムやスリル、と いったことを特別に主張しようという気持ちはないようだ。 動きの流れの中で瞬時に切りとられるショットは、さすがに美しい。
写真とのコラボレーションを展開するために、ダンスがこうした動きのリズムになっているのか、それもわからなかった。ただ、写真がかなり大きな比重を占めるこのパフォーマンスは、アーティスティックなシーンをショー的にみせている、と危惧させる危険も私には感じられた。
舞台上で生成されている動きのクローズアップをフラッシュで挿入することと、ダンスそのものをだけを見ること、その違いをどう意識すればいいのか、理解が到らぬうちに、現実のダンスが終ってしまった、そんな鑑賞体験だったことを告白しておく。
(9月30日、彩の国さいたま芸術劇場 大ホール)