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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2006.10.10]

ル・リッシュが出演し、能舞台で上演されたサルトルの『出口なし』

 ル・リッシュが出演し、能舞台で上演されたサルトルの『出口なし』
ジャン=ポール・サルトルの戯曲『出口なし』を、コメディ・フランセーズのギョーム・ガリエンヌが演出し、能舞台で上演する試みが行われた。出演は、コメディ・フランセーズの3人の俳優とパリ・オペラ座のエトワール、ニコラ・ル・リッシュ。
良く知られるように、サルトルは1960年代以降、日本に大きな影響を与えた実存主義哲学者であり、昨年、生誕100年を迎えてフランスで展示会などが催された。今年は、来日40周年に当たるそうだ。
『出口なし』は、地獄のある部屋に連れて来られた三人の死者が、言い争いを繰り広げるうちに、生と死の意味に気付いていく、というもの。芝居の内容として 能に通じるものがあるということから、「日本最古かつ最高の芸術様式のひとつである能に敬意を表し」て、能舞台で上演することになった。
ル・リッシュは、新聞記者ガルサン、元郵便局員イネス、社交界の婦人エステルを部屋に案内するボーイの役。未だ死者としての実感がうすい登場人物たち を、きっぱりと導く。摺り足で登場し演技というより、突然床を打ったり、所作ふうの動きなどを時折見せていた。前半だけだが、台詞もかなりあり、当然では あるが、芝居の舞台に立っても堂々たるものだった。ちなみに全員、足袋を履いて演技していた。
上演にあたって、観世銕之丞が芸術協力しているが、まったく違和感なく演じられ、むしろ新鮮な感じですらあった。
(9月2日、銕仙会能楽研修所)