ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2006.10.10]

枇杷系『FOOL'S PARADISE』

 山田せつ子が主宰する女性によるダンスカンパニー、枇杷系は、各々のメンバーが持つ個性的な身体性を巧みにからみ合せて独自のダンスの世界を創り上げて きた。今回の『FOOL’S PARADISE』も同様の手法だが、出演したのは尹明希らメンバー4人とゲストの十亀脩之介と竹内英明の計6人で、山田は不参加。新作は、楽園を目指し て「イビツなカラダで、バラバラな速度で、ひたすらに向かう」様を表そうとしたものだろう。
芝生を思わせる三枚の緑色のマットがバラバラに置かれ、その一つの上には造花のついた枝がぶらさがる。後方の壁が上がるにつれ、明かりが床をすべるように して前面に広がり、女が三人寝そべったりしているのが見えてきた。彼女らは膝で歩き、立ち上がって肩をピクつかせ、旋回し、側転でステージを回るなど、多 様な動きを見せたが、後から登場する女も含め、それぞれが紡ぎ出す動きに明確な関連性は見えてこない。めいめいが自分の体にどう動きたいのかを聞き、感じ 取ったままを動きにしているように映った。
はしごから下りてきた男は床を駆け抜け、ジャンプし、転がるといった動作を繰り返す。男がもうひとり現われると、互いに見合い、合図のように首を振り、手 で体を叩き合うなど、キビキビとしたやりとりが展開された。仕草による会話が、そこから聞こえてくるようにも感じた。また、キャスター付きの丸イスに座っ た女たちが、白い布をピエロがつける襟のように首まで引き上げ、縦横に舞台を走行するシーンは、心に去来するファンシーなイメージの具象化のようにも見え た。最後は、土砂降りの雨の音に拮抗するように、三人の女がそれぞれのバラバラな動きを加速させて終わった。
音楽は、クラシック音楽から騒音のような音楽、歌、自然の音など多彩に取り込んでいたが、そんな中で無音の状態に切り替わると、ダンサーの動きが奥行きを 増したように見えたのが興味深かった。幕開けから幕切れまで、全体は雑然としていながら、不思議と無秩序という感じを与えなかった。
(9月10日、吉祥寺シアター)