ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2006.09.10]

金井芙三枝リサイタル No.28 ---Final ---

 第1回のリサイタルは1962年。それからおよそ50年、未だ見事な舞台姿の金井芙三枝だが、今回の公演によってファイナルとするそうだ。
『未亡人~チェホフ「熊」より~』(台本・演出/金井芙三枝、演出・振付/二見一幸)、『千の囁き』(振付・衣裳/飯塚真穂)、『ブルーにこんがらがっ て』(振付/内田香)、『五重奏~金井芙三枝「五重奏」より~』(振付/波場千恵子)、『月蝕~闇の中の精霊たち~』(振付/坂本秀子)、『可愛い女~ チェホフ「可愛い女」より~』(台本・演出/金井芙三枝、上田遥、振付/上田遥)という充実したプログラムが組まれていた。
金井芙三枝の嚇々たる舞踊歴については、多くの人々に語られているので、私などが口を挟む余地はない。

金井がラストステージとして選んだ作品は、アントン・チェーホフの『可愛い女』だった。
75歳の<可愛い女>が語る三つの恋の物語である。劇作家と医者、そして郵便配達夫という人生で出会った三人の男性について、可愛い女の金井が愛する心のすべてを全身で表す。黒子兼コール・ドのコロスが効果的である。
若い恋する女と老いた女を、金井は同じ衣裳のままじつに見事に演じ分ける。そして三人目の郵便配達夫のラブレターを手にソロを踊る可愛い女、金井の初々しい舞姿を、私は生涯忘れることはできないだろう。
金井芙三枝がファイナル・リサイタルの結びに使った言葉は、「雀百まで踊り忘れず」であった。
(8月31日、新国立劇場小劇場)


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