ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2006.05.10]

金光郁子&バレエキャラバン『ロートレック』

 1978年に結成された金光郁子とバレエキャラバンは、その翌年から休みなく公演を続けて、今回が30回目を迎えた。その公演が、それまでの舞台の演出、音楽監督を務め、金光の公私にわたるパートナーであった土屋三郎の追悼公演となってしまったのである。
選ばれた演目は3回目の上演となる『ロートレック』であった。

言わずと知れたパリ歓楽の巷、赤い風車が回るム-ラン・ルージュ。世紀末のモンマルトルを舞台に、ラ・グリュー、アヴリル、ギルベールを描いて盛名を馳 せたロートレック。フレンチ・カンカンの嬌声と興奮の中で天賦の才を発揮し、パリの夜を愛し、やがてアブサンのグラスの中に溺れていった世紀の画家を、華 麗な衣裳風俗と魅惑に満ちた音楽とともに描いた舞踊劇である。

青井於兎(土屋三郎)の台本では、ロートレックは、パリに暮らす、かつて一世を風靡したロシアの名舞踊家エド・ローゼンスタイン夫人に魅了され、彼女を 描き続ける。そして、ローゼンスタイン夫人はラヴェルの『ボレロ』による新作を発表する。ロートレックはアルコールに蝕まれつつ、ROUGE、ROSE、 JQVEW、VERT、VIORET、BLEUEなどの絵の具の精が、ラヴェルのリズムの中に華やかに乱舞する舞台の幻覚を観る、という見事なエンディン グである。
『滝の白糸』以来、土屋三郎とともに26年間、舞台制作に携わっているという、デザイナー、ワダ エミの衣裳が素晴らしい。ダンスと音楽とともに、衣裳が時代の華やかさを際立たせているために、天才画家の人生の哀感が深く印象に残るのである。
(4月23日、メルパルクホール)


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