ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2006.03.10]
「梅は咲いたか、桜はまだかいな」の季節。道を歩いていると、ふと梅の香りに春を誘われることがあります‥‥。と、のんびりしてもいられませんね。ダンスの舞台はバレエ、モダン、コンテンポラリーの来日ラッシュでもうとっくに熱くなっています。

ルジマトフ、フェジェーエフ、プリセツカヤが集った<バレエの美神>

  1999年に第1回を開催、以来3回目となる<バレエの美神>。第1回にも登場した<世界のバレエのミューズ>プリセツカヤを迎え、ルジマトフ、ファ ジェーエフ、ピエトラガラ、チェルノブロフキナ、レドフスカヤ、ムッサン、ロモリなどに加えて、レニングラード国立バレエ団のダンサーが集った。

まず、『ドン・キホーテ』第2幕の夢の場面。イリーナ・ペレンがドルシネア姫、オクサーナ・シェスタコワが森の女王に扮し、レニングラード国立バレエ団 と共に踊った。プティパの振付に基づいてボヤルチコフが演出しているが、コール・ド・バレエもよく整っていて幕開きにふさわしい雰囲気を漂わせた。続いて ワシーリエフ版の『ロミオとジュリエット』からバルコニーのシーン。この作品を初演したモスクワ音楽劇場バレエのナタリア・レドフスカヤとゲオルギー・ス ミレフスキーが踊った。ワシーリエフの澱みないパ・ド・ドゥは、余情を残すくちづけしながらのピルエットで終った。第1部の最後は笠井叡がルジマトフに振 付けたソロ『レクイエム』。あまりステップを使わず、観客に背中を見せるシーンの多いダンスだが、ルジマトフの内面をしぼりだすようなゆるぎないコンセン トレーションが凄かった。

  第2部は、久しぶりのマリ=クロード・ピエトラガラがジュリアン・ドゥルオと踊った『忘れないで‥‥』で始まった。振付も2人で一緒に手掛けたもの。男と 女の激しいやりとりが、幻想シーンを交えて展開された。レドフスカヤとスミレフスキーのモスクワ音楽劇場組は、ブリャンツエフ振付の『幻想舞踏会』の1場 面。軽やかなクラシックの中に、床を転がったりする動きが自然に組み込まれていた。息の合ったペアである。

第3部は、オクサーナ・クチュルクとレニングラード国立バレエ団による『眠りの森の美女』からローズ・アダージョ。これもプティパ版をボヤルチコフが演 出したものである。クチュルクの落ち着いたオーロラだった。キーロフ・バレエのプリンシパル、アンドリアン・ファジェーエフはペレンと『眠りの森の美女』 のグラン・パ・ド・ドゥを踊った。ファジェーエフの細心の注意を全身に行き渡らせた、たおやかな動きが際立った。

そして、<美神>マイヤ・プリセツカヤの登場。ベジャールがプリセツカヤのためだけに振付けた『アヴェ・マイヤ』である。紅と白の扇を両手にもって踊 る。あの白鳥の死の瞬間を描いたアームスの美しい流れるような動き。年齢をまったく感じさせない、まさに<美神>の舞台であった。さらにディルフィーヌ・ ムッサンとウィルフリード・ロモリのオペラ座組が、ノイマイヤー振付の『シルヴィア』のパ・ド・ドゥを踊り、鮮やかなイメージをクールな美の中に描いた。

おおとりは、ルジマトフとクチュルクが踊った『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥ。何度観てもルジマトフの完璧な舞台姿が、爽やかな解放感を味わ わせてくれる。カーテンコールは、プリセツカヤを中心としたスターたちが居並ぶきらびやかなものとなり、惜しまれつつ幕が下ろされた。
(2月4日、オーチャ-ドホール)


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3月10日更新分の文中に誤りあり、13日AM10:30修正させていただきました。ご覧いただいた皆様、関係者の皆様には大変ご迷惑をお掛けいたしました。謹んでお詫び申し上げます。
※修正箇所「オクサーナ・クチュルクが森の女王に扮し」(誤)→「オクサーナ・シェスタコワが森の女王に扮し」(正)