ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2006.03.10]

<マラーホフの贈り物 2006> Aプロ

  第五回を迎えた<マラーホフの贈り物>のAプロ。マラーホフは、ドイツ、ロシア、アメリカのバレエ団から七人のプリンシパルを招き、東京バレエ団の参加も 得て、多彩な演目を披露して楽しませた。幕開けは、マラーホフとABTのJ・ケントによる『ザ・グラン・パ・ド・ドゥ』。黒縁メガネのケントがバッグを手 離すまいと、左右に持ち替え、あげく口にくわえて踊れば、マラーホフは彼女の片手、片足を持って振り回し、共に相手に逆らい、体をぶつけるなど、絶妙なタ イミングの演技で笑わせた。二人はほかに東京バレエ団と共演し、『白鳥の湖』の第二幕を踊った。ケントは腕や体を典雅に操り、脚を打ち振わせ、しっとりと オデットの情感を表現。マラーホフは的確なマイムやサポートで応えた。

  ミュンヘン・バレエ団のL・ラカッラとC・ピエールは現代作品を踊った。『椿姫』(カニパローリ振付)では、ラカッラがヒロインの期待や喜びを全身から滲 ませて秀逸。ポアントの美しさは抜群で、足先の動きが言葉になる。ピエールも流麗な流れに乗って青年の情熱を燃え上がらせた。『ライト・レイン』(アルピ ノ振付)では、異国風の音楽に合わせて、ラカッラが、しなやかな体をフルに生かし、彫像のように次々とポーズを決めていくのに目を奪われた。ベルリン国立 バレエ団のP・セミオノワとA・シュピレフスキーが最初に踊ったのは『菩提樹の夢』(ショルツ振付)のアダージョ。スポットライトに浮かび上がった男女 が、もたれ合い、離れてはまた絡み合う様を抒情豊かに綴った。“黒鳥のパ・ド・ドゥ”では、セミオノワがグラン・フェッテにダブルを連続して入れ、会場を 沸かせた。

ボリショイ・バレエ団のM・アレクサンドロワとS・フィーリンは『ファラオの娘』と『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥで、古典の様式を鮮やかに 具現してみせた。特に後者でフィーリンが見せた強靭な跳躍は見事だった。マラーホフは、お馴染みの作品『ヴォヤージュ』で最後を締めた。白いパンツに上着 をはおって現われたマラーホフは、何かを求めてか振りきろうとしてか、腕を横や天に差し伸べ、身をかがめ、また相手を確かめるように手を振り、キスを投 げ、急に険しい顔にもなる。繊細な心の軌跡をストレートに伝え、今ある自分を慈しむように映った。
(2月24日、ゆうぽうと簡易保険ホール)


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