ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2006.02.10]

ダンス・シアター・ルーデンスの『Moments』

 岩淵多喜子が主宰するダンス・シアター・ルーデンスの新作『Moments』が上演された。共同振付にもクレジットされた5名(岩淵を含む)の女性ダンサーによる舞台である。
幕開きは、舞台中央にぽつんと置かれた一個の空き缶。暗転すると5名のダンサーがそれぞれのポジションに登場している。無音の動きがあって、音楽とシン クロする動きになっていく。音楽は、リュリ、シューベルト、ヴィヴァルディなどの曲と激しい蝉の声や列車が走る轟音などが使われた。

白い砂で床に大きな抽象的図形を描き、それを打ち消したり、白い砂の入った同じ空き缶の砂を1個づつ抜いて砂山を作ったり、その空になった缶を規則的に 置いて相似形のオブジェを作ったり、あるいは踊り終えたダンサーたちが横一線に並び、大きな叫び声あげたり、順々に大笑いしたり、スローモーションでくず 折れたり、といったさまざまなパフォーマンスが行われた。そしてダンサーたちが去った後には、ちりじりに蹴散らされた砂山、破壊された空き缶のオブジェ が、まるで夏の去った公園の砂場ようにとり残された。
人がそれぞれこころの中に留めているある「モメント」を、舞台に再構成して解体する試みである。形あるものが壊れたり、形成された時間が崩れたりすることに対する情動が感じられた作品だった。

ただ今回は、前作の『Distance』のような個性的な表現は少なかったのではないか。時間に対する崩壊の感覚は感じられたが、テーマをなぞるような形式的な表現が多かったような気がしたのだが。
(1月27日、横浜赤レンガ倉庫1号館)