ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2006.01.10]

Noism05『NINA--物質化する生け贄』

  一作ごとに斬新な舞台を提示する金森穣が、また独創的な作品『NINA--物質化する生け贄』を、手勢のNoismと発表した。Noismは、新潟市民芸 術文化会館「りゅーとぴあ」が、わが国初の公共ホール専属のダンス・カンパニーとして金森を芸術監督に迎えて設立したもの。2005年9月で二シーズン目 に入り、着実に成果を上げている。

『NINA』は、三方を黒い幕でふさがれた舞台で、床に転がり、座り、突っ立った五人の女たちがマネキン人形のように不動で、ボックスに腰掛ける一人の 男も静止したまま、という異様な光景で始まった。暗転の後、男の数は五人になる。女たちはベージュのレオタードで、男たちは黒のシャツにズボンと、モノク ロームの世界である。女たちは男たちに人形のように腕や脚、体を操られ、水平や垂直に掲げられ、引きずり回されるまま。感情や意志を表そうとしても、男た ちに封じられる。バウンドするリズムに乗せて機械的に踊る女のソロや、武術の要素を取り入れたような規律ある男たちの踊りもあったが、目を奪われたのは、 身体の動きの可能性をここまで要求するかと思わせる男たちに、いとも柔軟に応じた「物質化する生け贄」の女たちの動きだった。女たちの身体が、そして彼女 らが見せる一つ一つのポーズが、記号というか言葉となって存在を主張していたのである。

後半では、ワンピース姿になった女性たちが変化をもたらした。前屈みで足を踏ん張って歩いたり飛んだりすると、上体が隠れているだけに、黄色いスカート からのぞいた脚が鳥のそれのようでユーモラスに映る。裸足のまま、フェッテなどバレエのステップやポーズを次々にこなし、束縛されていた状態を発散させる ように快活に踊った。鮮やかな色のシャツとズボンの男も一人まじって盛り上げた。だが、女たちはカラフルな衣装を脱がされると、人形に戻った。これは、女 たちに服を脱がされると、男たちもロボット化してしまう場面と呼応している。虚飾を削ぎ落とした生身の人間として、“そこに在ること”で勝負させたのだろ う。それだけに、ダンサーの力量がうかがえた。音楽は、ベトナム系フランス人のトン・タッ・アン。境界のない音楽が創作の特色というだけに、クラシック音 楽やテクノ調、アジア的な響き、原始的なリズムなど、変化に富んだ音楽がダンスに寄り添い、時に挑発し、効果を高めていた。
(12月24日、新国立劇場中劇場)