ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.12.10]

●Kバレエ カンパニー『くるみ割り人形』

  次々に古典バレエの改訂を手掛けてきた熊川哲也が、『くるみ割り人形』に取り組んだ。クリスマス・イヴにクララが夢で見た世界を描くという従来の展開を受 けながら、人形王国のマリー姫と王子をネズミとくるみ割り人形に変えたねずみの王様の呪いを、純真無垢なクララが世界一硬いクルミを割って解く話しを編み 込んだ。クララに現実と異界を行き来させるのは、ホフマンの原作に近づけたもの。クララの役割が増したからか、大人のバレリーナーが踊る。ドロッセルマイ ヤーは人形王国の使いという設定で、劇の進行を促す。

人形王国の一件は、プロローグと第一幕でコロンビーヌらの踊りの替わりに挿入した人形劇で手際良く伝えた。元気一杯の少年たちや澄ました少女たちの様子、 人形の兵隊とねずみの戦いなどが、場面に則したダンスで活写された。ダンスで語る熊川の手腕に一層磨きがかかった。ただジャンプの多い雪の国の踊りは音楽 に合わせるのに忙しそうだった。

第 二幕、クララが呪いを解くと、各国の人形が踊りを披露する。腕や手を直角に曲げて静謐なポーズを紡いだアラビア人形と、驚異的な跳躍やステップを見せたロ シア人形が秀逸だった。マリー姫と王子によるグランド・パ・ド・ドゥは、多彩なジャンプや回転を駆使しながら、あくまで格調高い。そしてクララの目覚めへ と、熊川版は快調に運んだ。

16 日と19日のマチネを観たが、16日にくるみ割り人形と王子を踊った熊川が、宙を切るジャンプなど、鮮やかな技を流れるようにつないで圧倒した。熊川と組 んだマリー姫の康村和恵も、手脚をたおやかに使い、典雅に舞った。クララの中平絢子は、喜びや恐怖など心の動きを、全身を使って自然な演技で伝えた。ド ロッセルマイヤーは両日ともスチュアート・キャシディ。軽快なジャンプで筋運びを助けながら、出すぎることはなかった。

19日マチネのキャストは、言わば若手組み。熊川と同じ役を演じた芳賀望が、推進力のあるジャンプを見せた。踊りでも演技でも、間の取り方が板についてき たようだ。アラビア人形の松岡梨絵(16日)と康村(19日)、ロシア人形の田中一也とピョートル・コプカ(両日)も卓越していた。装置も洗練されてお り、クララの家の外壁が開いて室内に換わる所や、幻想的な雪の国などが目を奪った。
(11月16日、19日昼、オーチャードホール)