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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.12.10]

●シルヴィ・ギエム 最後の『ボレロ』

 今や恒例の〈シルヴィ・ギエム・オン・ステージ〉。今回は『ボレロ』を踊るのはこれで最後と宣言、このベジャールの傑作をメインに東京バレエ団と巡演中。そのBプロを観た。

ギエムが踊ったのは2作品。まず、自身が高く評価する振付家ラッセル・マリファントの新作『Push』(音楽=A・カウトン)を、ミラノ・スカラ座バレエ 団のマッシモ・ムッルと踊った。ムッルの肩に乗ったギエムが暗い照明に浮かぶ。脚を水平に伸ばし、逆さにぶら下がり、ムッルの体に巻きついたりした後、闇 に消えるといったモチーフが3度繰り返される。今度は、体重をかけて手を引き合い、背中合わせになり、片手で回転し、床をころがるなど、動きは密度を増し た。極限まで動きのスピードを落とし、情感を無視したような30分に及ぶ体と体の対話。それは神秘の光りを帯び、不思議な詩情を漂わせた。

『PUSH』


『ボレロ』
そ して『ボレロ』。赤い円卓の上で踊るギエムは、渾身の力を指先に込め、上体を屈め、鋭く跳ね、頭上に脚を振り上げ、内から燃焼していく。挑むように前方を 見据え、髪を振り乱して床を打ち、自分を飲み込む勢いの男性群舞に激しく抗うが、それは今回、自己との戦いのように映った。求心力の強い演技は、観ている 側をも燃え尽きさせた。一体、何度ギエムの『ボレロ』を観たことか。気迫不足と感じた時もあったが、ベジャールが客席にいた時やバレンボイム指揮シカゴ響 の演奏で踊った時の、オーラを放った舞台は別格だった。今回また見て、最後にするにはあまりに惜しいと思った。匂いたつようなエロスを発散したジョル ジュ・ドンと並んで、ギエムの『ボレロ』も、いずれ神話になるのだろう。

ほかに、東京バレエ団が2作品を上演した。バランシンの『テーマとヴァリエーション』は、プリンシパルを踊った吉岡美佳と木村和夫らが、格式高い古典バレ エの様式を楽しませた。生と性の目覚めを描いたベジャールの『春の祭典』では、大嶋正樹が表情豊かに生贄を演じ、井脇幸江が澄んだ哀しさを漂わせた。
(11月21日、東京文化会館)


『テーマと
ヴァリエーション』

『春の祭典』

『春の祭典』