ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.11.10]
 北の国からちらほらと初雪の便りが届くようになってきました。05年もあっと言う間に、『くるみ割り人形』のシーズンがやってきます。 でも、これから日本のダンスは、新しいダンサーや作品がどんどん登場して、もっともっとエキサイティングになっていくことでしょう。 観客もダンサーに負けずに、さらに積極的にダンスを観に出かけましょう。

●『ピンク・フロイド・バレエ』のヨーロッパ・ツアー凱旋公演!

 ロ-ラン・プティの『ピンク・フロイド・バレエ』は、1972年マルセイユ・バレエ団により初演されたが、その後2004年に、新たな楽曲が加えられて牧阿佐美バレエ団により甦った。 そして今年9月、プティが生れ育ったパリのシャンゼリゼ劇場、そしてビアリッツ、ガール・デュ・ミディ劇場、バルセロナ、ティアボリ劇場で上演された。 したがって今回の東京公演は、ヨーロッパ・ツアーの凱旋公演である。
ゲストダンサーも初演のリエンツ・チャン、シャーロット・タルボット、マリ=アニエス・ジローに代わって、ルシア・ラカッラ、シリル・ピエール、レイモンド・レべック、スライドが踊った。 ヨーロッパ・ツアーもこの東京公演と同じキャストだったそうだ。

「Careful with that axe, Eugene」
「One of these days」
ラカッラ&ピエール

牧阿佐美バレエ団のダンサーは、昨年の初演では少々ぎこちなさを感じさせたと記憶するが、パリ公演を経て素晴らしい動きを見せた。 恐らくプティのバレエの本拠ともいうべきパリ公演に向けて、緊張感をもってラカッラ、ピエールなどの優れたダンサーとともに集中して踊ったことが、今回の舞台に効果的に現れたのではないだろうか。

『ピンク・フロイド・バレエ』の舞台は、装置や小道具を排して、レーザービームと照明とスモークの効果のみによって構成されている。 言うまでもなく、ロックコンサートの演出方法を大胆にダンス公演の演出に持ち込んだものである。 ハリウッドのミュージカル映画やパリのミュージックホールなどの演出を手掛けて成功を収めた、プティならではの発想と演出・振付というべきであろう。

ダンスは80分間休憩無しで、24名の白いレオタードとタイツの女性ダンサーと上半身裸で白いタイツをはいた25名の男性ダンサーによって踊られる。 そして、舞台上の光の効果とストリートダンスを含むダンサーのムーヴメントが、ピンク・フロイドの曲とともに壮大な美の変幻を描く。
クラシック・バレエを主体とするカンパニーのダンサーたちが、これだけのムーヴメントだけで構成されたダンスを踊り切る、ということは無論それなりの困難をともなうものであったろう。 しかし牧バレエ団が、<ダンス・ヴァンテアン>のコンテンポラリー・ダンスやその他のプティ作品とも積極的に取り組んできた成果が、この舞台にははっきりと感じられた。

とりわけ、柔軟な身体を駆使して完璧な動きをみせたラカッラは、氷の彫像のような比類ない美しさに輝いていた。 また、白いタイツに黒い脛当てがアクセントとなり、素敵なリズム感で踊った黒人ダンサーのスライド。 そして「フィガロ」紙のルネ・シルヴァンに「トラボルタばりに腰を振る」と評され、オープニングとエンディングにソロを踊るなど大活躍だった菊地研のダンスが深く印象に残った。
(10月16日、東京国際フォーラム A)
次のアドレスで菊地研のインタビューがみられます。
http://www.fujitv.co.jp/art-net/


アルタンフヤグ・ドゥガラー
菊地研
草刈民代&レモンド・レベック
スライド&佐藤洋介