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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.11.10]

●ビントレーの『カルミナ・ブラーナ』を新国立劇場バレエ団が日本初演!

 新国立劇場バレエ団の05/06シーズン開幕は、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の芸術監督を務めるデイヴィッド・ビントレーが、 1995年に振付けた『カルミナ・ブラーナ』。文化庁芸術祭の主催公演だそうである。 新国立劇場バレエ団は9シーズン目を迎えたが、史上初の<オーケストラ、合唱団、ソリスト歌手の共演>になる、という。 それがこの作品が選ばれた要因かもしれない。オーケストラも合唱団も歌手も備わっているのだからフルに使うべきだ、と。それが観客の要求とフィットしていれば、結構なことである。

ダンサーは、主役の運命の女神フォルトゥナがバーミンガム・ロイヤル・バレエのソリスト、シルヴィア・ヒメネスと湯川麻美子、 神学生3は同じくプリンシパルのイアン・マッケイと山本隆之のダブルキャストだった。スタッフは、ビントレーを始め、指揮、装置衣装、照明からノーテイターに至るまで英国側である。

ビントレーはカール・オルフのこの曲を16歳の時に聴き、ダンスにしたいと思った。そして1995年にバーミンガム・ロイヤル・バレエの芸術監督に就任すると、すぐに実現している。

ビントレー版の『カルミナ・ブラーナ』大きな特徴は、信仰と愛と欲望の問題を現代風俗の中で描こうとしていること。 運命の女神フォルトゥナに、信仰の世界から呼び出された三人の神学生。さまざまな愛と肉と欲望にあふれた世界を体験する三人の神学生を通して、人間の愚かさと信仰の大きな世界をみせる。

ビントレーはこの作品は「60年代の英国のポップカルチャー」に色付けされている、と言っている。 それはダンスホールやナイトクラブで青春を生きる、若者たちの生態に描かれているのであろうか。 ネオンや大きな布を使った演出のアイディアは、見事だし、黒いタイトスカートを着た運命の女神の造型も鮮やか。 ただ、そうした素敵なヴィジュアルに比べると、ダンス自体の力が少々足りないような気がした。 もっと圧倒するようなダンス自体の高揚感を期待したのだけれど。
(10月29日、新国立オペラ劇場)