ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.10.10]

●さまざまなコンテンポラリー・ダンスから

 コンドルズは『TOP OF THE WORLD』エベレスト・スペシャル公演である。順風満帆に人気を集めてきたコンドルズが、朝日舞台芸術賞受賞、北米ツアー、渋谷公会堂公演などなどの成 功を記して、有頂天気分で思い切って創った舞台。トップを競う、というシチュエーションを使ったコントと踊りで構成されている。
コントを演じるダンサーたちが、舞台を重ねるうちにそれぞれ自身のキャラクターをしっかりと把握し、観客もそれを知っているから、さまざまのヴァリエーションを創り易くなっているのである。
近藤良平のダンスは素敵だし、ほかのダンサーたちもダンス・シーンを力強くまとめている。恐らくコンテンポラリー・ダンスの中で、今、最も人気があり、最も楽しいカンパニーである。
(9月24日、シアター・アプル)

文化庁の舞台芸術国際フェスティバルと提携した新国立劇場のダンスコンサート「舞姫と牧神達の午後」を観た。韓国のペアは『Where is my moon ?』という作品を踊った。第4回世界バレエ&モダンダンスコンクールで銀メダルを受賞したダンス・デュオである。モダンダンスをベースに、いわゆるコンテ ンポラリー・ダンスの動きを採り入れている。赤い布を象徴的に使い、複雑なからみと動きで構成していてなかなかおもしろい舞台だった。
蘭このみは、フラメンコを自在に操って、新たなシチュエーションに置く。すると今までとは異なった表現がフラメンコから生まれてくる。『光芒~長き尾を 引き 流れ星は~』は、そんな印象を与えたフラメンコであった。男性(清水典人)にフラメンコの裾な長い衣装を着せ、蘭は思い出と戯れる踊りで、愛の記憶 の余韻を踊った。

アメリカのマイケル・シューマッハとイタリアのアレッシオ・シルベストリンは、フォーサイス作品の音楽で知られるトム・ウィレムスの新曲を使った 『noon afternoon』を踊った。元フランクルルト・バレエの3人による舞台である。「連続する即興デュエット」というらしいのだが、ふたりのダンスが間断 なく、ちょうど際限なく続いていく意識の流れを視覚化したように展開していく。いや、意識のない虫の無原則の動きのように、というべきかもしれない。照明 は舞台と客席の境界をまったく無視して光を当てる。しかも照明の変化は一定の間隔を置いて機械的に繰り返されている。当然のようにダンスは客席でも盛んに 踊られ、ウィレムスの音楽はわざわざ客席の背後に音源を据えて流される。いわば、ダンスという環境を創ったかのような時間だった。
(9月16日、新国立劇場小ホール)

パク・ユースン&キム

蘭このみ

マイケル&アレッシオ

上島雪夫が「フィジカル・シアター・シリーズ II」として『Double Vision』と『Dance at the PARKING』を上演した。上島は主にミュージカルの世界で活躍していたが、近年は、自身のダンス作品の上演も意欲的に行っている。ニューヨーク上演の 際に好評を博した『Double Vision』は、通勤電車のつり革に掴まってからオフィスの椅子に座るまでの男の幻想をダンスにしたもの。ストレスや癒しの希求、諦めなどが現れていは 消えて行く。「豊かな日本のために働き続けて倒れていった我々の父、兄たちに捧ぐ」とプログラムには記されていた。『Dance at the PARKING』は、駐車場の夜、ひとりぼっちの女の子が感じた光景。ストリート系の粋がった3人の男の子たち、街で働いている男や女たち、みんな新しい 環境を求めている。軽いユーモアとダンス、上島らしい楽しい仕事だった。
(9月23日、オリべホール)

『覇王別妃』は上海東方青春舞踊団が来日し、上演した。物語は、司馬遷の『史記』に描かれた英雄たちの世界。漢の高祖、劉邦と楚国の覇王、項羽、そして項羽の恋人、虞美人を巡る、四面楚歌や「虞や虞や若を奈何せん」などの故事で有名な愛と権力のドラマである。
ダンサーたちは上海バレエ学校や解放軍芸術学院などで、バレエ、モダンダンスと中国の民族舞踊を学んでいる。中国人ダンサーらしく高い身体能力を感じさせる踊りで構成されていた。
戦闘シーンなどの群舞はたいへんに力強いし、ダンスによる「馬」の表現は秀逸。個々のダンサーが非常によく訓練されている舞台だった。ただ、著名な中国 の歴史的な物語の世界をできるだけ平易に、観客に伝えようとする努力には敬意を評するが、字幕とナレーションによる説明はやや過剰にも感じられた。
(9月14日、オーチャ-ドホール)