ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.08.10]

●中村恩恵『a play of a play』

イリ・キリアンの愛弟子、中村恩恵が、五人のダンサーとパーカッションの逸材、加藤訓子と共に、『a play of a play』を創作した。中村はネザーランド・ダンス・シアターでダンサーとして活躍した後、1999年に退団。 現在は振付に力を注いでいる。新作のタイトルはピーター・ブルックの著書の言葉「劇(play)は、遊び(play)である」をひねったもので、ダンサーに「架空の世界で精一杯戯れ、演じ、生きて欲しい」との願いをこめたそうだ。 舞台では厳粛なダンスを展開する一方、観客も巻き込んだゲームで楽しませた。

床に敷かれた四角い黒のリノリウムの一角が高く吊り上げられて白い裏を見せている。左右の階段踊り場にはドラム缶が、舞台上手にはマリンバが置かれている。 上手階段を降りてきた加藤がドラム缶を手やマレットで叩き始めると、ダンサーが現れ、踊り始めた。 随所にソロを置きながら、男女のペアや、二組みのペアが呼応するなど、次々に変化する。腕や体を思いきりたわめ、脚のバネを利かせて、精妙な身体言語で語り合う。 加藤はマリンバから切っ先鋭い音やころがるような音を叩き出し、多彩な音色でダンサーを鼓舞した。
 

20分も経過し、吊るされていたリノリウムの角が解かれて床に広げられると、ダンサーの一人が「ゲームをしましょう」と観客に呼びかけた。 二分された観客が、ある言葉から連想した言葉を投げ掛け合い、その言葉の幾つかを二人のダンサーが即興で表現する。 「ハリウッド」など身振りにしにくい課題も、ダンサーは創造力で切り抜け、喝采を浴びた。言葉(虚構)と現実を繋ぐ実験を楽しむと同時に、言葉と動きで空想力を刺激する知的なゲーム。 遊びの後では、背後の壁にダンサーのシルエットも投影され、彼らの動きが一段と示唆深く見えたから不思議だ。最後の中村のソロは、自在な身体の収縮が魂の発露のように心に迫り、思わず息を飲んだ。
(7月18日、彩の国さいたま芸術劇場・小ホール)