ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.07.10]

●スターダンサーズ・バレエ団が『緑のテーブル』とルッカートの新作

 同じドイツから、スターダンサーズ・バレエ団が振付のフェリックス・ルッカートおよびスタッフを招いて新作『tokyo-tools』と、クルト・ヨースの傑作『緑のテーブル』を上演した。

ルッカートはミュージシャンだったが、82年からダンスを始め、一時ピナ・バウシュのカンパニーで踊り、のちにフリーとなり振付をするようになった。 彼の主唱するダンス制作の手法は、「ツール・システム」というもの。振付家がある一定のルールを決め、そのルールに従いながらダンサーが即興で踊って行くシステムである。 これを押し進めていくことにより、創造性とルーティーンと身体機能が独特のリズムを創り、非常に可能性のあるダンスが生まれるのではないか、という仮説に基づいて舞台を構成している。 振付はもちろん、照明、音楽(2名)、衣裳はすべてドイツからやってきたスタッフで、スターダンサーズ・バレエ団のダンサーが踊った。

15名のダンサーがそれぞれの動きを見せ、速い展開でシーンを現出していく。近づいたり離れたり、戯れたり無関心だったり、観客は終始、ダンサーたちが創る動きの滑らかなラインを観る。 音楽は、様々な抽象音を構成したもので、舞台は明るい白を基調とした空間である。音楽はやや並列的な印象を受けたが、ダンスはアクティヴな、ダンサーの主張が感じられる清新なものであった。 これがたとえば『NY-tools』であったり『rondon-tools』であったなら、まったく異なった舞台となるだろう、とも思った。
『tokyo-tools』


『緑のテーブル』
『緑のテーブル』は、1932年にバレエ・スエドワの創設者として有名なロルフ・ド・マレがパリで行った振付のコンペティション、 アーカイヴ・インターナショナル.ド・ラ・ダンスで第一位になり、一躍世界的に有名になった作品である。

冒頭は、コーヘン作曲のピアノの連弾にのせて、黒い礼服の紳士たちが緑のクロスを掛けたテーブルを囲んで、ジェスチャーたっぷりに会議する有名なシーン。 パワー・オブ・ポリティックスの中、身体から発するあらゆる表現を駆使して、一分でも利益に浴そうと奮闘する紳士たちの動きをダンスで表したもの。
  シーンが変わると、戦争の現実が描かれる。「別れ」「戦闘」「追われた者たち」「パルチザン」「酒場」「最後に残った者たち」などのシーンが、死神がほっつき歩く凄惨な戦場で踊られる。 明快なステップで踊られる、20世紀の<死の舞踏>を思わせるダンスである。

ラストは、再び黒い礼服の紳士たちが右往左往するシーンとなる。観客が、現実の戦争が終ったのか、続いているのか、ひと休みなのかと、考えざるの得ない力を秘めたダンス。 ドイツのダンスの力強さを堪能した一夜であった。
(6月30日、ル テアトル銀座)