ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.07.10]

●東京文化会館コラボレーションコンサート  〈H・アール・カオス×大友直人×都響〉

「東京文化会館コラボレーションコンサート」と銘打ち、振付家・大島早紀子が主宰するダンスカンパニー、H・アール・カオスと、同会館音楽監督の大友直人と都響が共演した。 モーツァルトの交響曲第31番「パリ」で始まり、大島がラヴェルの『ボレロ』に振り付けた新作が続き、大島の代表作とされるストラヴィンスキーの音楽による『春の祭典』で締めくくられた。 今年の正月には、モーツァルトをサティ作曲『パラード』に替え、後の二作品はベジャールの振り付けによるガラ公演が、井上道義指揮都響と東京バレエ団により行われているだけに、一層、興味深かった。

モーツァルトでは、オーケストラを赤い緞帳の前のピットに当たる部分に、床を少し沈めて配したことにもよるのだろう、響きが今一つ伸びてこない気がした。

大島はダンサーの白河直子を核に創作する。『ボレロ』も同様で、赤いズボンに上半身裸の白河が赤い花びらの円環に閉じ込められて横たわり、これを囲むように五人の女性ダンサーが後方のイスに座っている。 この冒頭は、ベジャールの演出を意識したのかもしれない。白河は床から胸を反らし、体を痙攣させ、目覚めていく。 立ち上がり、両腕を翼のように広げるなど、音楽の高揚に乗じて動きを増幅させていくが、円環を出ようとはしない。 それを蹴散らして侵食するのは、外側の攻撃的なダンサーたちで、赤い花びらを投げ入れもした。すると白河は床をころげ、飛びはねたが、いつもの過激さではなく、むしろ素直さで訴えた。 赤は命の象徴なのか、真紅の布で三段に組まれた背後の壁が鮮やかだった。

『春の祭典』は、事件の被害者(白河)が、四人の傍観者により、非情なまでに追い詰められていく様を克明に綴る。 白河は極限まで背をのぞけらせ、バスタブで濡らした長い髪を振り回して水滴を撒き散らし、宙吊りで訴えるように客席に向かってジャンプ。 犠牲者の苦悩を体現して鮮烈だった。 『ボレロ』も『春の祭典』も、オーケストラにとって人気の曲目だが、前者では危うげなソロも聴かれ、後者では指揮者の統率力に乱れが生じており、生演奏の醍醐味を味わうまでには至らなかったのは残念だ。
(6月8日、東京文化会館)