ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.06.10]

●ラ ダンス コントラステが新作『フェンステル「窓」』を上演

ラ ダンス コントラステの新作『フェンステル「窓」』は、ロマンティック・バレエの傑作『コッペリア』の原型となったホフマンの短編『砂男』を、振付の佐藤宏が独自の解釈で読み替えた独創的な作品だった。
小説の主人公ナタナエル(『コッペリア』ではフランツ)は科学の実験に熱中する砂男に置き換えられているが、恋人クララ(スワニルダ)がいるのは同じ。小 説やバレエと異なるのは、妄想の中で、ナタナエルが魂を吹き込まれた人形オリムピア(コッペリア)と愛し合うようになることで、それがクララをも妄想の世 界に巻き込むこととなり、悲劇を迎える。登場人物を三人に絞り込んだことで、三者が綾なす心の葛藤が一層際立ち、妄想と現実を行き来する濃密な作品に仕上 がった。

装置といっても、窓の付いた細長い壁が置かれただけの簡素な舞台。風の音と光のざわめきで、ナタナエル(東山竜彦)が妄想の世界に入り込んだことを表した のだろう。彼はクララ(依田久美子)と床を転げ、起き上がり、脚を高く振り上げ、彼女をシフトしたりもする。白い面を被ったオリムピア(近藤舞)は、ひじ やひざの曲げを強調するなど人形振りを交えて踊ったが、窓の中で身を屈めたポーズが、魂はあっても人間になりきれない哀しさを漂わせて印象に残った。魂の ありようを面の有無で象徴したのだろうが、その面の不思議な表現力にも驚かされた。各々のソロや三人のユニゾン、組み合わせを変えてのデュオで進行する が、クララが恋人を人形に奪われたと焦る辺りから緊迫感が増す。ナタナエルは、クララに殺めらたのか、横たわるオリムピアの面を拾って胸に抱き、降りてき た黒い幕にからむように倒れ込む。明るさが戻ると、動かぬナタナエルをよそに、何事もなかったように、クララはイスに座り、オリムピアは窓の中でポーズを 取っている。意表を突いた鮮やかな幕切れだった。ダンサーは大胆な振りを巧みにこなしたが、欲をいえば、東山の演技がもう少し緻密だったら、ドラマ性が高 まったろう。
(5月25日、草月ホール)