ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.05.10]

●ローザスの『ビッチェズ・ブリュー/タコマ・ナロウズ』

 アンヌ.テレサ・ドゥ・ケースマイケルが03年に自身のカンパニー、ローザスに振付けた『ビッチェズ・ブリュー/タコマ・ナロウズ』が、彩の国さいたま芸術劇場で上演された。 音楽はマイルス・デイヴィスの「ビッチェズ・ブリュー」。

この「ビッチェズ・ブリュー」は、1969年8月のウッドストックが終った2日後、マイルス・デイヴィスを中心とする13人のミュージシャンによりセッションが行われ、さらに二度にわたって演奏された素材をモンタージュして、伝説的な2枚のアルバムにまとめられた。

「騒乱の時代----1969年のマイルス・デイヴィスは『ビッチェズ・ブリュー』において、その時代に共鳴しているように思えます」とケースマイケルは言う。 ロバート・ケネディ、キング牧師、マルコムXが暗殺され、アフリカ系アメリカ人は人種差別に反対して立ち上がった。市民はヴェトナム戦争に反抗を表明した。 マイルス・デイヴィスの「ビッチェズ・ブリュー」は、これらの民衆の爆発的エネルギーを刺激していたように思う、とも言う。

ケースマイケルの『ビッチェズ・ブリュー/タコマ・ナロウズ』は、ダンサーのインプロヴィゼーション(即興)によって創られている。 それまでの作品には、彼女があらかじめダンサーたちに一連の動き・振付を与えていた。しかし今回の舞台にはそうしたコレオグラフィック・フレーズはない。

舞台は、三方を鈍い色のカーテンでスクエアに囲まれている。冒頭は数人のダンサーがメインのメロディを踊り、つぎつぎと踊り継がれて行く。 14名の男女のダンサーのうちの数人の集団の動きが、あちらこちらの発生しスポットを浴びる。しかし、また一人か二人の踊りに分散していく……、といった動きが変形を重ねながら繰り返されていく。 今までのローザスの作品には見られなかった力強い明解な動きと、川の流れに自然に現れる渦のような集団の動きの流れが、ジャズのリズムと融合してダイナミックな自由を感じさせる舞台だった。


(4月8日、彩の国さいたま芸術劇場大ホール)