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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.05.10]

●シルヴィ・ギエムの〈愛の物語〉

 シルヴィ・ギエムの発案による〈愛の物語〉は、様々な愛の形を描いた現代バレエの名作を並べた公演。 2003年に初めて開催して好評だったため、今回は演目を増やし、東京では2種のプログラムを上演した。ここではAプロを、次号でBプロを取り上げる。

Aプロはアシュトン振り付けの2作品で構成。ギエムは前回と同じくニコラ・ル・リッシュと組んで『マルグリットとアルマン』を踊った。 フォンテインとヌレエフという今や伝説のペアのために、『椿姫』を下敷きに創作された名作を、新たなペアが20数年振りに復活させたもの。 ギエムはより一層きめ細やかな感情表現で感動を誘った。 アルマンがマルグリットを抱いて回転するシーンでも、ギエムは上体や脚に微妙なニュアンスを付け、ストレートに愛を燃え上がらせ、別離の苦悩を滲ませ、再会の喜びと哀しみを伝え分ける。 すらりと伸びた脚、甲の美しさにはいつもながら。ル・リシッシュはギエムとの息もぴたりと合って純朴な青年になりきり、爽やかな回転やポーズを決めた。 アルマンの父を演じたアンソニー・ダウエルの渋い存在感も忘れ難い。リストのロ短調ソナタの管弦楽版がドラマの陰影に合致しており、アシュトンの流れるような劇的な作舞にも改めて感心した。

『マルグリットとアルマン』

これに先立ち、東京バレエ団が『真夏の夜の夢』を上演した。有名なシェイクスピア劇を、メンデルスゾーンの音楽を用いて1時間のバレエに凝縮したもの。 妖精の王オベロンが女王タイターニアと夫婦げんかの末、妖精パックに集めさせた惚れ薬でしたいたずらが、2組の男女や村の劇団の男を巻き込んで大混乱を引き起こすが、すべて円く収まるお話。 妖精のひょうきんな動きや、恋人たちに要求される絶妙な間合いなど、ファンタスティックな物語にふさわしいアシュトン独特の振りがスパイスとして効いている。 評者が観た2日目は、吉岡美佳がタイターニアを優雅に演じ、オベロンの後藤晴雄と抒情的なデュオで最後を締めた。中島周は様々なジャンプを駆使し、いたずら者パックを好演。 若者を踊った木村和夫と古川和則のジャンプも冴え、女王に惚れられるロバの頭をかぶせられたボトム役の高橋竜太も愛嬌のあるポアントの妙技で笑わせた。 東京バレエ団がアシュトン作品を踊るのは初めてというが、そうは思えない出来栄えだった。

『真夏の夜の夢』

(4月30日、東京文化会館)