ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2005.04.10]

●馬と人間の繋がりによってこの世の未来を占うのか、ジンガロの『ルンタ』

 騎馬オペラ、ジンガロが待望の初来日を果たし『ルンタ----風の馬』を上演した。「ルンタ」とは、チベット語で「魔よけと祈りの旗」を意味するのだそうだ。

会場はサーカス場のように、円形のスペースを客席が囲んでいて、半透明のドームが覆ったり閉じたりできる。遊牧民のテントにヒントを得て作られた舞台である。

香が焚かれ、主宰者バルタバスが自らダライ・ラマに直接許可を得て連れてきたという、チベットの僧侶たちの鍛えられた声による読経と楽器演奏が、地鳴り のように響く。異形のマスクを被った死の国の住人たちが馬に乗り、旗を掲げて馬上で組合わさって走り巡る。チベット人ダンサーの踊り。もっとも感動的なバ ルタバスと馬の「パ・ド・ドゥ」とでもいうべきシーン。いっぱいのアヒルと女性騎手の愛に満たされたのどかな世界。馬たちだけのシーン。騎手たちと馬の華 麗なスリリングなショー、などなど興味の尽きない「生命の深淵」が明らかにされたようなスペクタクルであった。

「馬にこれほどの愛着をもっているのも、動物は人間よりも先に地上に存在していたわけで……馬がその象徴のような役割をしているような気もします。馬を通して我々は自らの存在の根源に触れているような感じです」とバルタバスは語る。

人類がこの地上に現れた頃、馬は既に君臨していた。人類は馬に接して意を伝え、馬の意を汲んで生きていたであろう。まさに神話の時代だが、そこには今、 我々が失ってしまった生命と生命の清冽なコミュニケーションがあった。それと同じものかどうか知るよしもないが、バルタバスと馬のパ・ド・ドゥに、もちろ ん鞭でも鐙でもない、原初の交歓を観た、そんな気がした公演であった。
(3月16日、木場公園内ジンガロ特設シアター)