ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.04.10]

●カナダのカンパニー・マリー・シュイナールが独創的な2作品を上演

  カナダのモントリオールから、斬新な身体表現を開拓し続ける振付家マリー・シュイナールのカンパニーが来日し、2つの話題作を上演した。前半の『ショパン による二十四の前奏曲』は、この“ピアノの詩人”による24の前奏曲に、第17曲を除いて振付けた1999年の創作という。生演奏(ピアノはジャン=フラ ンソワ・ラトゥール)による公演は、今回が初めてだったそうだ。原曲は30~40秒ほどの小品から5分近い曲まで様々だが、24の調性が体系的に組まれて いる。シュイナールは、珠玉のピアノ曲の持つ詩情や秩序を離れ、曲趣から受けたインスピレーションと戯れるように、自由な発想で振付けていた。水着のよう なシンプルな衣装を着た男女のダンサーたちの踊りは、ソロやデュオ、グループと変わる。一列に並んだダンサーたちが一人の女性をバトンのように受け渡した り、女性が男性の長い髪を引っ張りながら進んだりといったファンシーな場面を織り交ぜながら、意表をつく動きや建築的なフォメーションが展開された。ダン サーたちのしなやかで逞しい体と、卓越した技術あっての舞台といえよう。

『ショパンによる二十四の前奏曲』

  後半の『コラール~讃歌~』は、「コレオグラフィ」と「コラール」がギリシャ語で同じ語源を持つことから着想した、セクシュアリティと神性の概念をめぐる 2003年の作品。やはりソロやデュオ、群舞などの短いシーンから成るが、特異なのは、息の音や遠吠えを模した声、嬌声、あえぎ声といった声のパフォーマ ンスとダンスを一体化したことで、まさに原始の世界を彷彿させた。シルエットの多用も目に付いた。影絵となったダンサーたちの踊る身体は、どこか劇画的 だったが、根源的な生のリズムをみなぎらせていた。脚をからめて向き合って座るヒンドゥー教の神々を思わせる男女のポーズや、男の体に飛び付きキスを浴び せる女など、セクシュアリティの描写も直截で、唐突に女性が全裸になりもした。身体の各部を舌に至るまで分節的にとらえて編み出された振りは、バイタリ ティに富んだもの。全体として、ワイルドさと知的な諧謔が混在する、人間の身体の可能性を讃歌する作品になっていた。

『コラール~讃歌~』
(3月20日、Bunkamura シアターコクーン)