ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2005.04.10]

●珍しいキノコ舞踊団『家まで歩いてく。』

  女性ダンサーのみによる「珍しいキノコ舞踊団」が、1年8か月振りに新作『家まで歩いてく。』を披露した。1990年の創立時のメンバーで、現在は団の代 表を務める伊藤千枝が構成・振付・演出し、伊藤を含め6人のダンサーが出演したこの作品は、いつものように「生活」や「日常」を親密に紡いでいくもの。ス テージには、ミニチュア家具付きの仕切りのような壁をいくつか置き、それを入れ替えたり、向きを変えたりすることで、異なるシーンを巧みに演出した。運び 込まれた二つ折りのカードのような小道具が開かれると、中からイスとテーブルのセットが飛び出してきて笑わせもした。

そんな変幻自在のステージで、ごく普通の衣服を着たダンサーたちが、イスやクッションに座り、ベッドに寝転び、歩き回る。しなやかに身をたわめ、腕や脚を 大きく振り回し、日常の仕草にリズミカルな呼吸を与え、空間に大きく解き放っていく。仕草をダンス化するのでも、ダンス化された仕草をなぞるのでもない、 キノコ流のプリゼンテーション。台車に乗せられたダンサーが高校生活を回想して聞かせると、他のダンサーも兄弟げんかの思い出などを次々に語った。もちろ ん間にダンスをはさみながら。これは舞台と観客との距離を埋める効果があった。 

生活の断片を連らねたステージが、いつも以上に緻密な構成を印象づけたのは、今回の会場にもよると思う。この舞踊団は、劇場にこだわらず、ギャラリーや戸 外の庭園などでも、その空間を生かしたパフォーマンスを展開してきたが、今回は、平土間のステージを客席が馬蹄型に囲むという独特の空間を持つ劇場であ る。だからか、野外でのように舞台が拡散しすぎて隙間を生じることはなく、全体によどみなく流れ、しかも中身が凝縮されたように感じたのである。また、ダ ンサーたちの技量にも一層磨きがかかっていた。ある種の“素人っぽさ”を持ち味としていた時期は過ぎたようで、今後の展開が気になるところだ。

(3月10日、彩の国さいたま芸術劇場小ホール)