ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2004.06.10]

●マリア・パヘスの新作『ソング・ビフォア・ウォー』  トマティート&ホアキン・グリロ

 マリア・パヘス舞踊団が新作『ソング・ビフォア・ウォー』(完全版 世界初演)と『フラメンコ・リパブリック』を持って来日公演を行った。

日本のマリア・パヘスの観客は、『リヴァー・ダンス』のフラメンコ・パートを踊った(振付も)パヘスに魅せられてしまった人が多いと思われる。確かにあ のパヘスの踊りは、フラメンコという呼称を越えたダンスそのもののルーツをも感じさせるものであった。その後パヘスは、『ラ・ティラーナ~プラド美術館の 亡霊』『アンダルシアの犬』『イルシオネスFM』などの作品を日本でも上演しているが、どれも伝統的フラメンコには収まりきらない舞台だった。

今回の新作『ソング・ビフォア・ウォー』は、昔の詩歌が喚起するものが振付の源となっている。パヘスは、1971年に公開されたスペイン市民戦争後の時 代を、歌によって描いたドキュメンタリー映画に触発されて創ったという。そして『ソング・ビフォア・ウォー』の最後に踊られたのはジョン・レノンの『イマ ジン』。新しい戦争が各地でくすぶる21世紀へ、パヘスの深いメッセージが込められた圧巻の舞台であった。『フラメンコ・リパブリック』でいっそう舞台は 盛り上がり、カーテンコールでは盛んに喝采が贈られた。(5月19日、新宿文化センター)

<トマティート&ホアキン・グリロと仲間たち>の公演は、第1部がトマティートの演奏。極限を極めたかのような乾いた音の素晴らしい構成だった。第2部 は、フラメンコの神様といわれたパコ・デ・ルシアとともにワールド・ツァーを行っていたホアキン・グリロとホセ・ガルバンの娘パストーラ・ガルバンの踊 り。ダンスは、タブラオを思わせる暗いスポットの下で展開した。グリロの切れのいい闊達な男性的な踊りと、どんな曲線でも描いてみせるガルバンの柔軟な踊 りのフェミニンな感覚が鮮やかなコントラストを描いていた。(5月25日、新宿文化センター)