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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.03.10]

豪華な舞台美術と森下洋子の素晴らしい踊り

清水哲太郎 演出・振付 新『白鳥の湖』
松山バレエ団公演
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 松山バレエ団が創立61年目の最初の公演として、新『白鳥の湖』全幕を上演した。
お馴染みのチャイコフスキーの音楽を使い、清水哲太郎が演出・振付けている。
清水哲太郎版の新『白鳥の湖』は、物語を16世紀の神聖ローマ帝国の時代のある年に設定し、女王マリアが退位し、成人したジークフリード皇子が即位する式典を舞台としている。マリアが退位した後、ジークフリードは神聖ローマ帝国の新皇帝となる。また、ロットバルトは魔王フォン・ロットバルトとして、儀式の場面にも時折登場するし、通常は王子の友人であるベンノは伯爵、家庭教師ヴォルフガングは侯爵と称されて堂々たる貴族の衣裳を纏っている。
冒頭は宮廷中庭の薔薇庭園と皇太子の間で物語が進行するが、舞台のフレームは夥しい薔薇の花で飾られ、インテリアも豪華絢爛を極めている。
フォン・ロットバルトに扮しているのは、今回も押し出しの立派な鄭一鳴。彼は、当初から若い皇帝が皇位に即く時を狙って、この豊かな帝国を簒奪しようと謀を廻らしている。まずは、ロットバルトが魔術によって支配する銀の森に、若い皇帝を誘き出して、白鳥の姿に変えて閉じ込めている公女オデットに魅了させてしまおう、と企んでいる。その誘いのためにお祝いに見事な弩弓を贈る。
そしてロットバルトはジークフリードを銀の森に誘い出し、オデットと遭遇させることに成功する。すると二人はたちまち恋におち、真実愛し合うようになる。そしてオディールに欺かれたジークフリードは、オデットを失うが、誠の愛は貫かれ、ロットバルトの魔術は力を失い陰謀は脆くも崩れ去る、という物語。

オデット、オディールは森下洋子が踊っている。森下は、もうこのクラシック・バレエの代名詞のような演目の主役を、数えきれないくらい踊っていると思われるが、観るたびにその表現力には感心させられる。
第2幕のオデットの登場シーンから、美しい手の動きで瞬く間に観客を魅了する。清水哲太郎版では白鳥のアダージョの後に、無上の愛の啓示を喜ぶパ・ド・ドゥが加えられているが、その緊張した関係から理解し合った心を表す、雰囲気が一変する難しい表現もスムーズに踊られていた。
豪華で圧倒的な舞台美術と森下洋子の見事な踊りが溶け合う、贅沢な『白鳥の湖』である。
(2009年1月25日 東京文化会館)

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