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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2009.07.10]

フォーゲルと上野水香が『ジゼル』で息の合った演技を披露

レオニード・ラヴロフスキー『ジゼル』
東京バレエ団
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東京バレエ団が、創立45周年記念公演シリーズで、4月に『エチュード』で客演したばかりのフリーデマン・フォーゲルを再度招き、『ジゼル』を上演した。ジゼルは吉岡美佳と上野水香のダブルキャスト。この作品では初共演となった、上野と組んだ日を観た。
フォーゲルはシュツットガルト・バレエ団の人気のダンスール・ノーブル。凛々しいというよりは甘さの残る顔立ち、すらりと伸びた身体、しなやかだが強靭な脚の持ち主で、立っているだけで独特の柔らかな雰囲気を漂わせる。長身の上野との相性も良かった。

フォーゲルは、アルブレヒトが貴族という身分をわきまえながらジゼルへの愛をおさえられないのは、ジゼル同様、彼の心にも純粋さがあるからと、納得させる役作りだった。ジゼルが息絶えた後、村人たちに訴えてまわる姿からは、持って行き場のない憤懣が感じられた。
第2幕では、精霊となったジゼルの存在を敏感に感じ取り、繊細に応える様が心を打った。そして、ジゼルとの愛を昇華するようにジゼルの魂と踊る。ウィリたちに強要されて踊り続ける場面でも、ステップが乱れることはなく、むしろ律動感を増していった。
 

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上野がジゼルを踊ったのは昨年が初めてで、今回が2度目。フォーゲルの好サポートに導かれて、表情豊かに演じていた。上野のジゼルは、恥じらいのある、いかにも純真な村娘という感じで、アルブレヒトの抱擁やキスから身をかわした後で、そっと寄り添おうとする背中に彼への想いを滲ませるなど、細かな演技が生きていた。恋人の裏切りによるショックで心身ともに引き裂かれていく様は、狂気の中に正気に戻ったような瞬間を織り交ぜてリアルに演じた。ウィリとなってからは、しなやかな身体をフルに生かし、アルブレヒトを包み込むようにたおやかに舞い、また宙を漂うようにリフトされた。これで更に透明感が加わればと思う。

ヒラリオンを演じたのは後藤晴雄。ジゼルへの抑えきれない恋心を思い切りぶつけて迫るという演技ではなく、「こんなに愛しているのに、どうしてわかってくれないの」と訴えるような役作りが伝わってきて、微笑ましく感じた。
ミルタの田中結子は、まず精緻なパ・ド・ブーレで印象付け、威圧的というよりは、静かに厳かにウィリたちを統率して存在感を示した。バレエ団が繰り返し上演している作品だけに、幻想的なウィリたちの群舞や、4組の男女による〈ペザントの踊り〉(V・ワシーリエフ振付)なども、こなれており、全体に質の高い舞台が楽しめた。
(2009年6月11日、ゆうぽうとホール/photo: Kiyonori Hasegawa)