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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2009.08.10]

アルヴィン・エイリーのカンパニーの驚くべき身体のパフォーマンス

LES ETES DE LA DANSE DE PARIS
Alvin Ailey American Danse Theater
エテ・ドゥ・ラ・ダンス・ドゥ・パリ(パリの夏ダンスフェスティヴァル)
アルヴィン・エイリー・アメリカン・ダンス・シアター

パリの夏の恒例行事となったエテ・ドゥ・ラ・ダンス・ドゥ・パリが、今年はアルヴィン・エイリー・アメリカン・ダンス・シアターを招聘した。1931年にテキサスで小作農を両親として生まれたエイリーが、1958年に若手黒人ダンサーを集めて結成したダンスカンパニーも50周年を迎えた。今回のパリ公演は3つのプログラムを組んだが、そのうちのBプログラムを見た。

まず、意外に思ったのは創立者エイリー(1931−1989)の振付が一つも入っていないことだった。エイリーは79の作品を残す一方で確かにモーリス・ベジャールを初めとする自分以外の振付家を招いていたが、それでもエイリーの作品を一つでもいいからプログラムに入れてほしかった。
最初の「ザ・ゴールデン・セクション」The Golden Sectionは、トワイラ・サープ(1942生)の振付だ。1981年にブロードウエーで「トワイラ・サープ&ダンサーズ」が初演した『ザ・キャサリン・フイール』The Chatherine Wheelのフィ ナーレであり、1983年から独立して取り上げられている。デヴィッド・バーンの音楽に乗ったアクロバティックなダンサーたちの動きに目を奪われているうちに、18分の上演時間は過ぎ去っていた。めまぐるしい、としか表現の仕様がない。

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20分の休憩の後にはハンス・ファン・マーネンが1997年に振付けた『ソロ』Soloが続いた。音楽は一転してヨハン・セバスチャン・バッハの『ヴァイオリン組曲第1番』だが、スピーカーの音量が異様に大きいのには閉口させられた。『ソロ』というタイトルにも関らず三人の男性ダンサーが舞台全面を所狭しと駆け回る。非常に長い手足が身軽に自在に動く。独楽のように高速で回転するピルエットは何回回ったかが数えられないほど。間を一切おかない、スピード感あふれる8分間だった。

3つ目はカミーユ・A・ブラウン(1979年生)振付の『ザ・グローブ・トゥ・ノーバディズ・ビジネス』The Groove to Nobody’s Business(上演時間17分)。ニューヨークの地下 鉄の駅での寸劇風の作品である。失業者、若いカップル、ウオール・ストリートの会社員といった多種多様の人物に扮したダンサーたちが、コミカルに日常生活の一情景を描き出し、ミュージカルを見ているような雰囲気だった。

二度目の休憩後は最後の作品、『ラヴ・ストーリーズ』Love Stories。1989年に亡くなったエイリーの跡を継いだジュディス・ジャミソンが2004年に振付けた作品である。ジャミソンはヒップ・ホップの先駆者レニー・ハリスとモダン・ダンスのロバート・ラトルと協力して作品を作り上げた。ヒップホッブ、ボップ、カリブ海ダンス、西アフリカのダンスといった多様なダンスがスティーヴィー・ワンダーの音楽と一体になってアフリカ系アメリカ・ダンスへのオマージュを構成している。驚くべき身体のパーフォーマンスで、一見に値するスペクタクルであることは間違いない。
21時50分過ぎに音楽がやむと、客席からは熱狂的な拍手と喝采がシャトレ歌劇場に響き渡った。
(2009年7月15日 シャトレ歌劇場)

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