オペラ座のアイデンティティがはっきり刻印されていて、オペラ座のダンサーの特徴が活かされたプレルジョカージュの『ル・パルク』

ワールドレポート/パリ

三光 洋 Text by Hiroshi Sanko

Ballet de l'Opéra national de Paris パリ・オペラ座バレエ団

Le Parc(庭園)Angelin Preljocaj
『ル・パルク』アンジュラン・プレルジョカージュ:振付

パリ・オペラ座バレエ団は2月3日から2月25日まで(17公演)ガルニエ宮でアンジュラン・プレルジョカージュ振付の『ル・パルク』を上演した。1時間40分、序曲とプロローグ付きの2幕バレエは1994年4月9日にオペラ座バレエ団が世界初演を行った。それ以後、何度も再演され、今シリーズにおいて百四十公演に到達している。ちなみに初演のソリストはエリザベット・モーランとマニュエル・ルグリだった。
かつて男性ソリストを踊ったマチュー・ガニオはDance Qubeへのインタヴューで次のように語っている。
「『ル・パルク』を初演したことはオペラ座にとって誇りです。オペラ座バレエ団を象徴していますし、フランス人振付家の作品で、宮廷恋愛や自由な恋愛がテーマとなっていて、文化面でフランスが世界に輝いていた王朝時代をよく反映しています。世界のバレエ団のレパートリーが画一化してきている中にあって、オペラ座のアイデンティティがはっきり刻印されていて、オペラ座のダンサーの特徴が活かされています。」

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オニール八菜、ジェルマン・ルーヴェ
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

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オニール八菜、ジェルマン・ルーヴェ
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

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オニール八菜、ジェルマン・ルーヴェ
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

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オニール八菜、ジェルマン・ルーヴェ
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

今回のシリーズでは女性ソリストと男性ソリストには以下の五組が起用された。オニール 八菜とジェルマン・ルーヴェ(4回)、アマンディーヌ・アルビッソンとマルク・モロー(4回)、ドロテ・ジルベールとギヨーム・ジョップ(4回)、レオノール・ボーラックとフロラン・メラック(3回)、オニール 八菜とギヨーム・ジョップ(1回)、レティツィア・ガローニとギヨーム・ジョップ(1回)だった。このうち、初日を踊ったオニール 八菜とジェルマン・ルーヴェの3回目を2月8日に観ることができた。
十八世紀のブルボン王朝時代を想起させるエルヴェ・ピエールの洗練された衣裳を身につけたオニール 八菜とジェルマン・ルーヴェの組み合わせは、貴族らしい気品と若々しさとを持っていた。ジェルマン・ルーヴェはエネルギーにあふれながら、洗練そのものの跳躍でフランス的な優雅さを体現した。冷ややかなポーカーフェイスから込み上げる熱情へと場面に応じて変化する多彩な表情は、ラクロの書簡体小説「危険な関係」のヴァルモン子爵を思わせた。これに対してオニール 八菜は、深紅のドレスが波打つように揺れる繊細な動きによって、相手を避けていた最初の出会いから、第3幕の有名なキスの場面で男性に全てを委ねるまでの女性の心の逡巡と変容をていねいに描いていった。四人の庭師たちにリフトされるところでは、あたかも空中に浮いているかのような印象を与え、ヒロインが夢の世界にいることが誰にもはっきりと伝わってきた。

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アマンディーヌ・アルビッソン、マルク・モロー(他日公演)
© Yonathan Kellerman/ Opéra national de Paris

雅な男女を描いた十八世紀ロココ美術の旗手アントワーヌ・ヴァトーの絵画から抜け出してきたような二人の周囲では、十四名のコール・ド・バレエのメンバーが自由奔放な恋愛遊戯を繰り広げ、多彩な愛の相関図が描かれていった。
ゴラン・ヴェヨヴォダがデザインした効果音をバックに、三つの幕の冒頭とエピローグに登場する四人の庭師の不気味な、謎めいた存在も作品にメリハリを与えていた。
アンジュラン・プレルジョカージュはモーツアルト「ピアノ協奏曲23番」(イ長調 K488)の第2楽章アダージョにある空中に漂うかのような高い音を出発点として、この作品を作った。それだけに、ギリシャ人ゾエ・ゼニョーディ指揮のパリ室内管弦楽団とロシア人エレナ・ボネのピアノが三つのパ・ド・ドゥの背景に流れるピアノ協奏曲(第14、15、23番)をはじめとするモーツアルトの音楽を優しく奏で、ダンサーたちを支えていたことも上演成功の大きな要因となった。
オニール 八菜とジェルマン・ルーヴェ以外の組み合わせでは、残念ながら観られなかったがドロテ・ジルベールとギヨーム・ジョップの二人が高い評価を得たことを最後に付け加えておきたい。
(2026年2月8日マチネ ガルニエ宮)

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オニール八菜、ジェルマン・ルーヴェ
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

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オニール八菜、ジェルマン・ルーヴェ
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

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オニール八菜
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

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オニール八菜
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

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ジェルマン・ルーヴェ
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

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CW・ラム、 D・ストークス、M・ジョヴァニ、I・ロペス=ゴメス
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

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ドロテ・ジルベール、ギヨーム・ジョップ
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

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ドロテ・ジルベール、ギヨーム・ジョップ
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

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ドロテ・ジルベール、ギヨーム・ジョップ
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

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ドロテ・ジルベール
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

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レティツィア・ガローニ、ギヨーム・ジョップ
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

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オニール八菜、ギヨーム・ジョップ
© Maria-Helena Buckley/ Opéra national de Paris

『ル・パルク』(3幕バレエ)1994年4月9日パリ・オペラ座バレエ団により初演
振付 アンジュラン・プレルジョカージュ
音楽 モーツアルト
サウンド・デザイン ゴラン・ヴェヨヴォダ
装置 チェリー・ルプルースト
衣装 エルヴェ・ピエール
照明 ジャック・シャトレ
照明アダプテーション エリック・ソワイエ
再演指導 ノエミ・ペルロフ
振付スコア ダニ・レヴェック
ゾエ・ゼノイオディ指揮 パリ室内管弦楽団
ピアノ エレナ・ボネ ヴェッセラ・ペロフスカ

配役(2月8日)
女性ソロ オニール 八菜
男性ソロ ジェルマン・ルーヴェ
庭師 チュン・ウイン・ラム ダニエル・ストークス イサック・ロペス・ゴメス マニュエル・ジョヴァーニ
構成と使用音楽
序曲 モーツアルト「交響曲第36番『リンツ』ハ長調K425」(1783年)から第1楽章「アダージョ」ハ長調
第1幕 
庭師たち(録音テープ)
1 モーツアルト「アダージョとフーガ ハ短調」K546(1783年)
男女の代表者たちが互いに見合う
オニール 八菜とジェルマン・ルーヴェ、レティツィア・ガローニ ファニー・ゴルス他、ケイタ・ベラミ ニコラ・ディ・ヴィーコ他
2 モーツアルト「六つのドイツ舞曲」K571 (1789年)
異性にアプローチする遊戯
3 モーツアルト「ピアノ協奏曲第14番 変ホ長調」K449 (1784年)より第2楽章「アンダンティーノ」変ロ長調
出会い パ・ド・ドゥ オニール 八菜とジェルマン・ルーヴェ
第2幕
庭師たち(録音テープ)
4 モーツアルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク ト長調」K525(1787年)より第4楽章「ロンドー」ト長調
甘い色香
女性ダンサーたちとオニール 八菜
5 モーツアルト「ディヴェルティメント第11番ニ長調」K251(1776)より第3楽章「アンダンティーノ」イ長調
欲望
男性ダンサーたちとジェルマン・ルーヴェ
6 モーツアルト「弦楽器とホルン2台のための音楽の冗談」K522(1787)より「プレスト」
征服
四人の恋する男 ケイタ・ベラミ ニコラ・ディ・ヴィーコ アクセル・マリアノ レオ・ドゥ・ブースロール
7 モーツアルト「ピアノ協奏曲第15番変ロ長調」K450(1784)よりアンダンテ
パ・ド・ドゥ オニール 八菜とジェルマン・ルーヴェ
インテルメッゾ
モーツアルト「交響曲第36番『リンツ』ハ長調K425」(1783年)から第4楽章「アダージョ」ヘ長調
第3幕
8 夢
庭師たちとオニール 八菜(録音テープ)
9 モーツアルト「ヨハン・セバスチャン・バッハによる弦楽器のためのアダージョとフーガ」の抜粋「アダージョ」ヘ長調 K404a(1782)
愁訴
恋する四人の女 レティツィア・ガローニ ファニー・ゴルス エレオノール・ゲリノー ヴィクトワール・アンクティル
10  モーツアルト「ディヴェルティメント変ロ長調」K137(1772)より「アレグロ」変ロ長調
熱情 ジェルマン・ルーヴェ
ケイタ・ベラミ ニコラ・ディ・ヴィーコ アクセル・マリアノ ファビアン・レヴィヨン レオ・ドゥ・ブースロール
11 モーツアルト「セレナード『ハフナー』」K250(1776)より第8楽章「アダージョ」 ニ長調
失神
エレノール・ゲリノー マチュー・ボット
オルタンス・パットラー ジャン=バティスト・シャヴィニエ
ヴィクトワール・アンクティル レオ・ドゥ・ブーソール
ファニー・ゴルス アクセル・マリアノ
オーバーヌ・フィリベール ニコラ・ディ・ヴィーコ
レティツィア・ガローニ ファビアン・レヴィヨン
カトリーヌ・ヒギンズ ケイタ・ベラミ
12 モーツアルト「ピアノ協奏曲第23番 イ長調」K488(1786)より第2楽章「アダージョ」嬰ヘ短調 
パ・ド・ドゥ オニール 八菜とジェルマン・ルーヴェ
エピローグ
庭師たち(録音テープ)

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