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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2009.03.10]

造形芸術、音楽、身体が混然一体となったナジの新作『アントラクト』はパリ市立劇場

THEATRE de La Ville
Josef Nadj : Entracte CREATION
パリ市立劇場
ジョセフ・ナジ 『アントラクト』(幕間)パリ初演
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 ジョセフ・ナジはハンガリーの振付家で、1987年に自分のダンスカンパニー、テアトル・ジェル(「ジェル」はマジャール語で「記号」を意味する)を創設した。その直後に発表した『北京ダック』で一躍注目を集めた。現在はオルレアン国立コレグラフィー・センターの総監督を務める。 
今回の『アントラクト』(幕間)では4人の音楽家の即興演奏に乗って、ナジを含む4人のダンサー(男性三人に女性一人)が舞台の上で即興の身体表現によって「絵」を描いていく。
ダンサーはそろって裸足で黒い服を着ている。ナジ自身が考案した装置は、客席に近い前方空間と後方の高くなった部分とが橋がかりでつなげられている。この中央が陥没した長方形の特定部分に光が当てられて、その場その場の空間を構成する。
この装置はきわめて洗練されたもので、闇に浮かび上がると説明不可能な不思議な感覚で観客をとらえる。4人のダンサーの動き自体も謎めいている。男性二人が女性を持ち上げて、女性の足を隅に置かれた赤インクの入った箱にひたす。この女性の足を筆のように使って、地面に漢字を書く。また、太鼓のような円筒形に男性を乗せて回転させ、地面に置かれた粘土をその額に貼り付ける。あるいは、半透明の画面に亀の甲羅を少しづつ白で描いていく。その動きと色は、闇から立ち上ってくるハンガリーのフリージャズに導かれて多様に変化する。この「フリージャズ」にはジャズ特有の繰り返しが目立つにせよ、使われているリズムや音形は明らかに東欧の民族音楽から想を得ており、現代音楽に近い曲想になっている。
造形芸術、音楽、身体が混然一体となったパーフォーマンスはきわめて個性的だ。
ただし、エグゾチックな雰囲気が濃厚なことを別とすれば、プログラムの解説にあった中国の「陰陽」との関連は最後までわからなかった。
(2009年2月12日、パリ市立劇場)

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