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斎藤 珠里 text by Julie Saito 
[2009.02.10]

『グッドモーニング・ミスター・ガーシュウィン』映像とシンクロするダンス

THEATRE NATIONAL DE CHAILLOT シャイヨー国立劇場から
JOSE MONTARVO & DOMINIQUE HERVIEU:Good Morning, Mr. Gershwin ジョゼ・モンタルヴォ&ドミニク・エルヴュ振付:『グッドモーニング・ミスター・ガーシュウィン』

 2008年6月からパリのシャイヨー国立劇場のトップを務める演出家のジョゼ・モンタルヴォと振付家ドミニク・エルヴュによる創作『グッドモーニング・ミスター・ガーシュウィン』が1月7日~2月7日、同劇場で上演された。

  ガーシュウィンへのオマージュともいえるコラージュ仕立て。劇団四季が度々上演している『クレイジー・フォー・ユー』などでもお馴染みのミュージカルナン バーが流れ、ヒップホップ、ブレークダンス、タップ、バレエダンサーたちが弾ける。舞台背後のスクリーンでは、ヴィヴィッドな映像が映し出され、舞台の動 きとミックスして見せる。モンタルヴォとエルヴュが日本でも上演されたオペラ『レ・パラダン』でも用いた演出手法だ。
冒頭のスクリーン映像では、ブクブクと海中の音が聞こえ、ダンサーたちが水の中を泳いでくる。着衣しているものもあれば、全裸もある。様々な体型の男女が、それぞれの泳法で行き交う様は、まるで海底の魚たちだ。
やがて映像にシンクロするようにダンサーたちが踊りだす。

  全体をつなぐテーマは、あえて言えば「海」なのだろう。途中、肉づきのいい女性ダンサーがシルエットの中で水着を着たり、大きなビーチボールの上を転がっ たりするが、選曲にしてもダンスにしても「海」との関連性を感じさせる構成にはなっていない。そのほかは、舞台後方に設けられた「お立ち台」の上でダン サーが水を口に含み、ガラガラと喉を鳴らしながらガーシュウィンの曲を口ずさむ、エクレアを女性が食べるシーンを大写しして何かを連想させるといった、客 席の笑いとり。
各ダンサーたちの技量、演技力、ましてやプロ並みの歌唱力を披露してくれた点では楽しめる。しかし、シャイヨー劇場の総監督を務める二人が発表する「新 作」としては、あまりにも手抜きという感が否めなかった。ガーシュウィンの名曲を散りばめてみるのなら、ミュージカルの方がストーリーも歌の聞かせ方も作 りが上だ。フランス人がブロードウェイの向こうを張ってチャレンジするというのなら、亜流でないヨーロピアンテイストが必要だろう。しかし、全日ほぼ満席 という入りを記録しているそうだから、フランスの観客はこれで満足しているのだろうか。
最近はオペラ座バレエも低迷しているという記事がフィガロ・マガジンにも載ったばかり。2009年のフランス・ダンス界に暗雲が立ち込めている。
(シャイヨー国立劇場 2009年1月23日)