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斎藤 珠里 text by Julie Saito 
[2008.10.10]

BALLET de l'OPERA de Lyon, CAMPAGNIE INVITEE : ROSAS
Anne Teresa De Keersmaekaer : D'un soir un jour

リヨン国立オペラ座バレエ、招待公演 : ローザス
アンヌ・テレザ・ドゥ・ケースメケール:『ある晩、ある日』

 リヨン国立オペラ座バレエは9月、リヨン・ダンス・ビアンナーレとのコラボレーションや共同制作で、マギー・マランやジェローム・ベル、ウィリア ム・フォーサイスなどの振付家の作品で構成する4プログラムでシーズンを開幕した。そのうちアンヌ・テレザ・ドゥ・ケースメケール(日本ではケースマイケ ルと表記されているが、発音はケースメケールが原語に近い)率いるローザスが9月16~19日、同オペラ座で公演した「D’un soir un jour(ある晩、ある日)」の最終日を観に行った。

 この作品は2006年、ブリュッセルのモネ劇場とパリ市立劇場が共同制作したもので、14人のダンサーを起用。ドビュッシーの『牧神の午後』、ス トラヴィンスキーの『管楽器のためのシンフォニー集』、メシアンの愛弟子だった英国出身のジョージ・ベンジャミンがローザスのために書いた『ダンス・フィ ギュール』と代表作『平らな地平線に囲まれて』、最後にまたドビュッシーの舞踊詩『遊戯』で構成されている。
冒頭、女性ダンサーが、ニジンスキーが踊った『牧神の午後』のポーズを模倣し、やがて男性や群舞が同様のポーズで様々にフォーメーションを変えながら動 きを発展させてゆく。人間の鍛えた筋肉と、つま先立ちした足先の動きが、獣の後ろ脚のように見えるほど『牧神』を意識した振付が斬新だった。続くストラ ヴィンスキーの曲に振付けた作品は、マーサ・グラハムを思わせる現代舞踊の様相が色濃い。長いフレアスカートを舞わせた、力強い女性群舞のダンスに、ケー スメケールの本質を見たような気がした。
プログラム全体を通して、ケースメケールの秀でた音楽性に触れたが、何と言ってもベンジャミンの曲との相性は抜群だった。終始、緊迫した音楽的空間に伸 縮性のある動きが絶妙に組み合わさって、どんどんエネルギーが高まってゆく様を体感できる。特に、身体的特徴にばらつきある男性ダンサーたちの、それぞれ に切れ味のよいピルエットとジャンプが息をのむほど美しかった。
最後は、冒頭と同じくドビュッシーを用いて、パーティ会場を設定にした遊び心ある作品だ。ケースメケールが、何を主眼において作品をつなぎあわせたのか わかりにくかったが、音楽というか、むしろ楽譜を読み込み、それに合ったダンサーを起用するというマニアックなまでのアプローチに触れられた晩だった。