ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2006.07.10]

Salome´ガロッタ、ピナ・バウシュなど、シーズン最後のテアトル・ド・ラ・ヴィル

 シーズンの最後にさしかかった5月から7月にかけて、テアトル・ド・ラ・ヴィルに は、アンヌテレサ・ド・ケースマイケルやピナ・バウシュなど常連の人気カンパニーが相次いで来演したが、作品的に際立っていたのが、ロレーヌ・バレエ団が 上演したジャン=クロード・ガロッタ振付『ドクター・ラビュス』であった。

  現在ディディエ・デシャンが統率するロレーヌ・バレエ団の公演は、6月6日から17日までレ・アベス劇場で行われた。『ドクター・ラビュス』は、1988 年にガロッタ自身のカンパニーによってグルノーブルで初演されたガロッタの代表作の一つで、数年前、日本でも上演され好評を博している。今回は、リメイク 版だが、今から約20年も前の作品とは思えない軽妙洒脱な舞台を展開し、新鮮な感動を呼び起こした。

タイプの異なる4組のカップルが、それぞれの関係の機微を演じ分けていくが、振付が多様で変化に富み、想像性豊かな年代の80ヌーヴェル・ダンスの最盛 期の一端に触れることができる。とりわけ、4組目の長身でモダンな真紅のチャイナ服の女性と、めがねをかけブルーのチャイナ服に身を包んだ男性のペアが傑 出していた。最初、意気投合して踊っていた二人が、途中で男性支配の関係に変わったかと思いきや、最後には、女性の方が強くなり、男は女に従って退場する という意外な結末を見せる。
4組のペアの踊りを挟んで、最初と最後に、ガロッタのキャラクターをほうふつとさせるダンサーが登場し思わせぶりな仕草をするのも面白い。アンリ・トルグ、セルジュ・フーパンの音響、ジャン=イヴ・ラングレの美術、衣裳も気が利いている。

<ドクター・ラビュス>


ケースマイケルの新作『D'un soir un jour』は、5月30日から6月12日まで。前半、後半各50分の2部構成で、全6曲の最初と最後に、ドビュッシー曲『牧神の午後』と『遊戯』を配し、 間にストラヴィンスキーとジョージ・ベンジャミンの曲を2曲ずつ入れたもの。ドビュッシーは、ニジンスキーの振付からインスピレーションを得たような面が 見られるが、どちらかと言うと、ストラヴィンスキーやベンジャミンの音楽の部分の方に、流動的な踊りのオリジナリティが出ていたようだ。

テアトル・ド・ラ・ヴィルのシーズン最後を締めくくったのは、ピナ・バウシュのヴッパタール舞踊団(6月17日から7月4日まで)。新作『ラフ・カット (Raugh cut)』は、韓国をテーマにしたもので、ピナ・バウシュが長年取り組んでいる世界都市シリーズの一環。
ことさら韓国の風俗習慣が強調されたわけではなく、時々白菜の葉を扇子替わりに仰ぐなどのシーンが見られたのがユーモラスでもあった。激しいパーカッ ションに合わせた踊りが多いのが特徴で、かつてのようなアクの強さが感じられなくなったとはいえ、ダンサーたちは達者な踊りで健闘。中では、若いトゥスネ ルダ・メルシーが徐々に存在感を増しているのが注目された。

ピナ・バウシュの新作<ROUGH CUT>
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