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渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2006.02.10]

デュポン&ガニオのフレッシュ・コンビ、オペラ座『白鳥の湖』続報

 昨年12月に始まったパリ・オペラ座『白鳥の湖』のロングラン公演は、終盤に入って、ゲストのディアナ・ヴィ シニョーワと新エトワール、バンジャマン・ペッシュのペア、オレリー・デュポンとマチュー・ガニオのペアなどが登場した。とりわけ1月7、10、12日の 3日間踊ったデュポン&ガニオ組が新鮮で強く印象に残る。

  デュポンは暮れには、マニュエル・ルグリとの共演で、オデット=オディール・デビューを飾っている。その時は、ヌレエフ版王子の機微を円熟した味わいで演 じたルグリのオーラに包まれて、悲劇的なヒロインを情感豊かに踊り上げたが、若いガニオと組んだ時は、ルグリとのような一体感はまだないものの、デュポン 自身が王子を導いていくような凛とした強さを見せ、エトワールとしての貫禄にも目を見張らされた。
エリザベト・プラテルのオデットを継承するような気品と優雅さ、そして何と言っても大輪のバラを思わせる舞台での華。中でも第3幕のオディールでのメリハリのきいた踊りや見事なバランスは、本領発揮といえるだろう。

デュポン&ルグリ

 


デュポン&ガニオ
  ガニオは、ヌレエフ版の第1幕の王子のソロを進級試験で踊りスジェに上がっているが、冒頭でまどろんでいるシーンから、王子そのものであり、見る者をロマ ンティックな世界に引き込むに十分な魅力をもっている。1幕と2幕の憂愁の雰囲気を漂わせた演技は、彼独自の深い味わいがあり、ヌレエフ版王子の新しい解 釈として注目される。ただ私の見た日は、ベスト・コンディションではなさそうで、第3幕のヌレエフ独特のアン・レールの技を組み合わせた速めのパッセージ で、スタミナが続かなかったのが惜しまれる。もっとも今回のシリーズでは、私の見た限り、王子役のエトワールが不調の日が多く、最も旬の魅力を感じさせた のは、このガニオとエルヴェ・モローの王子であったろうか。モローに関しては、結局今回もエトワールの任命が見送られたのは、ファンにとっても寂しいこと であった。

デュポン&ルグリ

デュポン&ガニオ

ガニオ
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 家庭教師ヴォルフガング=悪魔ロットバルトを演じたステファン・ブリヨンは、初めての役なのでまだ演技が平板で、主役二人と同格となるには至らなかっ た。ヌレエフ版のロットバルトという役柄は、演じる踊り手によってキャラクターが異なるのが興味深い。振り返ってみると、今回のシリーズで最も評判を呼ん だのは、ローラン・イレールのカリスマ的な演技だった。ザハーロワが客演した年末の2夜、ロットバルトに初挑戦したのだが、かつてなくノーブルで、ザハー ロワのオディールと見事に絵になるペアをなしていた。イレールやルグリの演技からは、ヌレエフがこの作品に込めたエスプリが伝わってくるのが、若手との 大きな違いだろうか。

 年末の進級試験で、プルミエール・ダンスーズに進級したミリアム・ウルド=ブラームとドロテ・ジルベール、スジェに上がったマチルド・フルステーだが、 ファニー・フィアットとともに、新年になっても小さな4羽の白鳥を踊っていた。4人が火花を散らして踊る、この組み合わせは何度見ても見応えがある。

 最後にほほえましいエピソードを一つ。第3幕で王子が6人のフィアンセと踊るシーンがあるが、フィアンセの一人にガニオの妹のマリーヌが扮していて、一 番最後にお兄さんとちょっと組む場面があった。これからも、何かの機会に兄妹共演のシーンが見られることがあるかもしれない。


ザハロワ&イレール

ル・リッシュ&イレール
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