ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Paris <パリ>: 最新の記事

From Paris <パリ>: 月別アーカイブ

渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2005.12.10]

●オーストラリア・ダンス・シアターとマギー・マランの新作

 ~テアトル・ド・ラ・ヴィル公演より
11月のテアトル・ド・ラ・ヴィルでは、オーストラリア・ダンス・シアターとマギー・マラン、ヴィム・ヴァンデケイビュスという3つのダンス公演が行われたが、ここでは、先の2公演についてご報告したい。

オーストラリア・ダンス・シアターは、1999年以来振付家のゲイリー・スチュワートに率いられているカンパニー。パリ初登場で、ダンサーたちが宙に舞 い上がっている、新作『Held』(2004年初演)のポスターの写真が刺激的なこともあって、注目を集めた。公演は11月15日~19日。

<HELD>

 


<HELD>
  開演前から舞台では、女流カメラマンが、ダンサーの顔のアップやらポーズ写真を撮影していて、それが舞台に置かれた2枚のスクリーンに映し出される。ビー トのきいた音響(ダリン・ヴェルハーゲン)は、開演してからは、フォーサイスを想起させるような耳をつんざく強烈な音に変わっていき、その中でカメラマン は、次々にダンサーのショットを撮り続ける。この作品は、『ヴィレッジ・ヴォイス』や『タイム』などで活躍するアメリカ人、カメラマン、ロイス・グリーン フィールドの写真とダンスとのコラボレーションをねらったもの。黒のスポーティーな扮装のダンサーたちは、カメラの前で激しく宙にジャンプし、回転し、床 に転がる。そのアクロバティックな動きは、エドゥアール・ロックやヴァンデケイビュスに通じるものがあり、最初は彼らのエネルギーに驚かされるが、同じよ うなパターンが続いて、ストロボに目がくらむと、だんだん疲れてくる。それはこの作品が、観客のためのダンスというより、写真の被写体としてのダンスで あったからかもしれない。試みとしては面白いがもうひと工夫あってもよかった。


 マギー・マランと言えば、1981年に発表された『May B』があまりにも有名なフランス・ヌーヴェル・ダンスの旗手の一人。『May B』は四半世紀の間に上演500回を越える大ヒット作となった。現在、マランは、リリュー=ラ=パプの国立振付センターを本拠に活動を続けている。今回は 3年ぶりのテアトル・ド・ラ・ヴィル登場で、新作には大きな期待が寄せられた。公演は11月22日から26日。

 新作のタイトルは、ドイツ語で『Umwelt(ウンヴェルト)』。”周辺世界”と訳されている。舞台奥には、乳白色の半透明のパネルや、鏡になったパネ ルが重ねられ並んでいる。ドゥニ・マリオットのギターを共鳴させた機械的な音響が繰り返し鳴り響く中、9人のダンサーたちが入れ替わり立ち替わり、パネル の向こうから忽然と現れては消えていく。服装を替えたり、帽子や王冠をかぶったり、何か食べたり、植木やぬいぐるみを手にしたり、争ったり、舞台に土を投 げ捨てたりしながら…。30分ほどしたところで、このまま変化なく同じことが繰り返されていくことを察知した観客が次々に席を立っていく。そして1時間 たっても、取り立てて変化はなく作品は終了する。静寂を破るように、客席から ”意味なし!” の一声に続いて、ブーイングが起こる。

 マランのイマジネーションはどこへ行ってしまったのだろう。客席の反応からは期待を裏切られた失望の思いが感じられた。このような繰り返しのパフォーマ ンスは、半世紀前なら目新しかったかもしれないが、現在ではレトロにしか映らない。マランの再起を待ちたい。


マギー・マランの<UMWELT>

マギー・マランの<UMWELT>