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渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2005.11.10]

●刺激的なカンとチェルカウイのデュオとDV8の新作----テアトル・ド・ラ・ヴィル公演より

  今シーズン、テアトル・ド・ラ・ヴィルでは、開幕のプレルジョカージュ振付『四季…』に続いて、刺激的な公演が相次いで、熱気がただよっている。10月 は、まずアクラム・カンとシディ・ラルビ・チェルカウイの異色のデュオ作品『零度(ZERO DEGREE)』(10月11日から16日まで)が上演された。

イギリス生まれのパキスタン人舞踊家カンと、ベルギー生まれのモロッコ人舞踊家ラルビ・チェルカウイ。二人の出会いのきっかけは、ラルビ・チェルカウイ が5年ほど前にカンの踊りを見て強い印象を受けたことにさかのぼるという。この作品は7月にロンドンで初演され、フランスのダンス雑誌『DANSER』の 表紙を飾った。国境とアイデンティティ、旅をテーマにした1時間10分ほどの作品である。カンの旅の経験を元に構成され、3つのパートの前にそれぞれ二人 が英語で語りを入れるが、ムードラを交えた語り口も雄弁である。

『零度(ZERO DEGREE)』

 


『零度(ZERO DEGREE)』
  グレー一色に囲まれた舞台には、白いマネキンが二体横たわっている。舞台奥で演奏する4人のミュージシャン(ヴァイオリン、チェロ、打楽器、歌)の姿が紗 幕越しに時折見える。ニティン・ソーネーによる音楽は、インドの伝統的な旋律やリズムに現代の響きをミックスさせたもの。精悍でシャープなカンと、ゴムの ように柔軟なラルビ・チェルカウイのデュオは、異なる個性がぶつかり合って、沸き上がるようなエネルギーを生み、大変スリリングなフュージョンが実現し た。洗練されたムードラと足を踏み鳴らすような民族的なステップ、流れるようなムーブメントなどなど、いずれもオリジナリティーが伝わってくる。


 なおラルビ・チェルカウイは、アラン・プラテル・バレエ団を離れ、モンテカルロ・バレエ団との仕事やアントワープでの新作準備にかかるという。
 続いて、ロイド・ニューソン率いるDV8フィジカル・シアターが来演し、新作の『Just for Show』を上演(10月20ー29日)、こちらも観客を熱狂させた。

  舞台には、真紅のカーテンがかかった小舞台が設置されている。このようなショー仕立ての舞台は、ドゥクフレ、モンタルヴォなどの作品でも試みられている が、DV8のステージは、ビデオ効果も駆使され、終始マジックとユーモアにあふれ、とりわけ大人の魅力がたっぷり。それはタニアというブロンドの女性ダン サーのセクシーな魅力によるところが大きい。まず買い物カートに乗って登場するのが意表を突いているが、その見事な脚線美とプロポーションに加え、魅惑的 な話術、ひいてはサーカス出身かと思うような柔軟さで曲芸技も披露、多彩な才能で、観客を完全にノックアウトしてしまった。

ほかにもポールという若いダンサーが、アスレティックな動きで活躍。観客に話しかけたり、シャンペンをサービスする辺りは、ピナ・バウシュ風でもある が、終演後は、出演者一人一人が前方の席の観客に”どうもありがとう”と言いながら、握手していくところまで、計算が行き届いた舞台に脱帽。

DV8