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渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2004.12.10]

●バスティーユで、『眠れる森の美女』開幕

 オペラ座バスティーユでは、オペラ座バレエ団によるチャイコ フスキー曲『眠れる森の美女』が11月20日開幕した。古典バレエに飢えていたパリのバレエ・ファンにとって、待望の出し物だったせいか、連日満員の盛 況。今シーズン、観客動員が伸び悩んでいたオペラ座に、ようやく本来の活況が戻ってきた印象である。
 このヌレエフ版『眠れる森の美女』の上演は、1999ー2000年シーズンの年末年始以来4年ぶり。89年の初演時は、ニコラス・ジョージアディスの美 術だったが、97年からエツィオ・フリジェリオの装置、フランカ・スクアルチャピ-ノの衣裳に一新され、その南欧風のまばゆい色彩に包まれた舞台は、絢爛 豪華でため息を誘う。

 キャストもほとんど一新され、主役のオーロラ姫は、 アニエス・ルテステュとオレリー・デュポンを除いて、レティシア・ピュジョル、マリ=アニエス・ジロー、メラニー・ユレル、ミリアム・ウルド=ブラームの 4人が初登場。それにゲストのスヴェトラーナ・ザハーロワが花を添える。
 一方、デジーレ王子には、 マニュエル・ルグリ、 ジョゼ・マルティネズ、ジャン=ギヨーム・バール、 バンジャマン・ペッシュに、 今回初めてのマチュー・ガニオ、クリストフ・デュケンヌ、そしてゲストのロベルト・ボッレが加わった7人が日替わりで登場する。どのカップルを見るか、 迷ってしまう多彩さだ。(以上は、11月25日現在の予定です。)


  私が見た二日目の25日は、初日と同じくピュジョルとバールの顔合わせ。オーロラ姫に初挑戦のピュジョルは、愛らしい容姿を生かして、はつらつとした役づ くり。第1幕は、お姫様というより庶民的な雰囲気で、ローズ・アダージオでは、緊張したのか、最初にバランスを崩してから動揺が見られたのが惜しまれた。 しかし、第2幕からは、確実なテクニックで、本来の調子を取り戻し、第3幕のグラン・パ・ド・ドゥでは、バールと絵になるカップルぶりで、喝采を浴びた。 回を重ねていくうちに、役づくりにも余裕が出てくることだろう。
 一方、バールは、前回2000年の上演の際、デジーレ王子を踊って、エトワールに任命されただけに、 超絶技巧もさらりとこなす余裕。王子の甘い雰囲気は十分あるので、踊りにもう少しめりはりが加われば、と思う。
 『青い鳥』のパ・ド・ドゥには、ユレルと予定されたペッシュに替わって、人気者のエマニュエル・ティボーが登場。抜群の跳躍力で、舞台を縦横無尽に舞い、エトワールの貫禄さえ漂う至芸に、割れるような拍手が起こった。ユレルも要所を決める心地よい踊りを見せた。


 コール・ド・バレエやソリストも大幅に若返ったが、目についたのが、20代の若手たちの間にあって、一回り世代が上のヌレエフ世代の踊り手たちの優雅な 立ち居振る舞いである。初日の新聞批評でも、指摘されていたが、若手たちの動きが体操を見るように、メカニックになりがちなのに対して、概して89年の初 演から舞台を踏んでいるソリストたちからは、古典バレエらしい香りが漂ってくるので、ほっとする。例えば、プロローグで、第6バリエーション(通常リラの 精の踊り)を踊ったカリン・アヴェルティは、少々疲れを感じさせたところもあったが、終始ほほえみを絶やさず、古典の様式美あるソロを披露した。この人 は、以前は、オーロラ姫を踊っており、世が世なら、エトワールになっていたかもしれない。そして、なんと言っても、リラの精を演じたナタリ-・リケの魅惑 的な美しさは特筆に値する。 ヌレエフ版では、リラの精は、マイムの役だが、 優美な物腰が、見る者をお伽噺の世界へいざなってくれる。カラボスのステファニー・ロンベルグが、メークもきつく、演技も力んで、コンテンポラリー・ダン スを見るようであったから、その対比は歴然としていた。マイムの役では、公爵夫人のミュリエル・アレの貴族的な演技も印象に残る。
 その他、3幕の長靴をはいた猫と白猫のパ・ド・ドゥを踊ったロール・ミュレ、ファビアン・ロク、プロローグの妖精たちの踊りの第5バリエーションで、久々に舞台復帰したファニー・フィアットなどの踊りが目を引いた。
 最後に、このところ、オペラ座バレエ団に客演の多いポール・コネリーの指揮が、色彩感溢れ、格調高い演奏を引き出していたのを付け加えておきたい。公演は、大晦日まで全22回。