ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Paris <パリ>: 最新の記事

From Paris <パリ>: 月別アーカイブ

渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe 
[2006.04.10]

マイヤ・プリセツカヤの80歳記念ガラ

昨年11月のモスクワ、今年2月の東京、ロンドンに続いて、2月28日パリのエスパス・カルダンで、世紀のプリマ、マイヤ・プリセツカヤの80歳記念の ガラ公演が開催された。入場料が150と100ユーロという高額にもかかわらず席は自由席、開演8時のところ、実際に幕が開いたのは9時で、オーガナイズ が不手際だったことと、予定されたヴィシニョーワが出演をキャンセルしたのが残念だった。
プログラムは、次の通り。

1、レーザー・ショー
2、<アヴェ・マイア>プリセツカヤの映像の抜粋
3、『新月、つまり』振付ドゥグロアト、出演ジャン・ギゼリックス、ウィルフリード・ピオレ
4、『三角帽子』振付マシーン、出演ジョゼ・マルティネズ
5、『ボヴァリー夫人』振付シャノン、出演、イルゼ・リエパ、マルク・ペレトキン
6、『女王』振付ドクターDA、出演マルシェラ・ゾルタン
7、『忘れないで…』振付ピエトラガラ、出演ピエトラガラ、ドゥルオー
8、『薔薇の死』振付プティ、出演ロパートキナ、クズネツォフ
9、『バラ色の人生』振付・出演カシュレアニュ
10、『瀕死の白鳥』振付フォーキン、出演二オラーゼ
11、『デュオ』振付ラトマンスキー、出演ザハーロワ、メルクリエフ
12、『アヴェ・マイア』振付ベジャール、出演プリセツカヤ

ロシアとフランスからそうそうたるスターたちが招かれたが、全体に選曲が地味だったのか、プリセツカヤを引き立てていたような印象に終わった。例えば、 現在『瀕死の白鳥』を踊って右に出るものはないロパートキナが、なぜ『瀕死』ではなく、あまりなじんでいないプティ作品を踊ったのか。ザハーロワの踊った 作品もフォーサイス風で、彼女の魅力を生かしたとは言いがたく、むしろモスクワで踊った『カルメン』の方を踊ってほしかった。

それにしても、立っているだけで辺りを払うプリセツカヤの存在感はさすがだった。冒頭で、『ボレロ』のリズムに乗って、ポール・ド・ブラを雄弁に動かし ながら舞台に君臨する女王の風格。ラストの『アヴェ・マイア』では、扇を両手に、『瀕死の白鳥』をほうふつとさせるパ・ド・ブレで優雅な舞姿を見せてくれ た。アンコールに応えてもう一回踊るというサービスぶりで、感動した観客は、この偉大なプリマを総立ちで讃えた。

ふと、今からもう30年以上前、プリセツカヤが来日した際、ある新聞に掲載された彼女自身のコメントが思い出された。記事によるとプリセツカヤは、いつ か自分のレパートリーを次の世代のバレリーナに引き継ぐことを考えていたという。しかし、実際そのための人材と時間を見つけるのは難しいということだっ た。プリセツカヤの芸術は、プリセツカヤとともにあることが再び実感された一晩だった。