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皆様こんにちは。 ニューヨークはやっと暖かくなって春らしい日が続いています。 4月はニューヨークでは主要なバレエ公演がありませんでしたが、5月からまたニューヨーク・シティ・バレエ団の公演が始まります。4月29日にニューヨーク・シティ・バレエのオープニング・ガラ公演がありました。

華やかなスプリング・ガラで世界初演されたミルピードとラトマンスキーのNYCB新作

New York City Ballet
ニュ−ヨーク・シティ・バレエ
「Spring Gala 2010」
Benjamin Millepied "Why am I not where you are"
Alexei Ratomansky "Namouna, A Grand Divertissement"
「スプリング・ガラ2010」
ベンジャミン・ミルピード振付 "Why am I not where you are"
アレクセイ・ラトマンスキー振付 "Namouna, A Grand Divertissement"

4月29日に、リンカーンセンターでニューヨーク・シティ・バレエ団の春の公演が始まり、スプリング・ガラが開催されました。バレエの終演後は、2階ロビーでパトロンたちのビュッフェ・パーティーが行われましたが、このパーティーには報道陣は入れません。
この日は、ニューヨーク・シティ・バレエ団に寄付をしているパトロンたちが招待されて一堂に集まるので、とても華やかな雰囲気です。女性たちはみんな背中が大きく開いたスソの長いイブニングドレスに身を包み、たくさんの宝石を身に着けていて、舞踏会さながらのいでたちです。エスコートしている男性たちも正装できちんとした方ばかりです。普段、街ですれ違う一般の人々と全く違った雰囲気の人々ばかりが集まっていて、会場は異様なまでにリッチでゴージャスなオーラに包まれて別世界でした。報道陣も多く詰め掛けていました。バレエは、このようなリッチなパトロンたちの寄付にも支えられて存続している文化なのですね。

最初は舞台上に大きなスクリーンが出て、そこに最近のニューヨーク・シティ・バレエ団の作品作りの様子を編集したドキュメンタリー仕立ての映像が映し出されました。特にこの日に上演する新作2作品について、振りをつけながら練習している風景や、大掛かりな舞台セットを作る様子、そのセットのアイデアを小さな模型を制作して議論している様子など、興味深い制作過程を映していました。
この映像はおそらく、このスプリング・ガラのために編集されたものだと思います。普段のほかの公演日には上演しないものではないかなと想います。他の公演日にも観劇する予定ですので、そのときに分かると思います。
映像の後は、挨拶や中心的なパトロンが代表してワインを乾杯しました。

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当日、2つの作品が上演されましたが、2つとも世界初演です。
最初は、『ファイ・アム・アイ・ノット・ウェア・ユー・アー』で、ベンジャミン・ミルピード振付の作品です。ミルピードは現役のニューヨーク・シティ・バレエ団のプリンシパル・ダンサーであり、気鋭の振付家としても活動していて現在注目されています。クラシック・バレエのダンサーでありながら振付家も兼ね備えている才能は珍しいです。

写真の舞台セットのとおり、最初に映像で紹介された舞台セットの小さな模型が、実際に舞台上で大きなセットに仕上がって登場していたので、幕が上がると会場から感動のため息とともに自然に大きな拍手が起こりました。大きな半円状の舞台セットのことです。始まる前の映像作品を見てから実際の舞台を見たので、一つのバレエ作品を作るためにはすごく多くの人々の手間がかかって出来上がるのだなということがよく分かり、感動を誘いました。

振付はミルピードらしく、クラシック・ベースですが、現代的なイメージのものです。音楽はチエリ・エスケシュ作曲のものです。リズムが一定でない現代的な音楽ですが、演奏はオーケストラです。
プリンシパルはキャスリン・モーガン、サラ・マ―ンズ、ショーン・スオッツィ、アマール・ラマザールです。

ミュージカル作品のような感じで、物語風になっていて、ダンサーたちは演技や情感をこめて踊っていました。
めまぐるしく数名ずつのダンサーたちが踊り、次々と重なっていき、シーンがつながっていきました。とても速い展開が続きました。右へ左へとすごく速いスピードでダンサーたちが踊り、重なりながら、シーンが流れていきます。この速い展開の続き方は、トワイラ・サープの作品を思い出しました。
まるでセリフを語っているような踊りや、激しい踊りもありました。
ずっと最後まで観ている人たちを飽きさせないような、目を離せない楽しい見応えのある作品でした。

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休憩をはさんで上演された2つ目の作品は、『ナムーナ、ア・グランド・ディヴェルティスマン』で、ボリショイ・バレエ芸術監督だったアレクセイ・ラトマンスキー振付です。音楽はエドゥアルド・ラロです。
プリンシパルはウェンディー・ウェラン、ロバート・フェアチャイルド、ジェニファー・リンガー、ダニエル・ウルブリヒト、アビ・スタフォード、サラ・マ―ンズです。

これは休憩なしで1時間以上、かなり長時間続いた作品で、客席ではみなさんの集中力が切れてきて、途中でそわそわ体を動かす人々の姿が多く見受けられました。私の席の両隣の方々も、終わりの30分くらいはしょっちゅう体を動かして、疲れのため息を何度もついていました。途中で1度休憩を入れて2部の構成にしたほうが観客の集中力が保てそうだなと思いました。

衣装もとても美しく、クラシックでありながらモダンでした。女性はみんな、ショートヘアーのボブカットの黒いおそろいのカツラか、白いショートのおそろいのカツラをかぶっていました。最初、黒い短いボブのカツラの女性たちが大勢、クリーム色の長いシフォンワンピースドレスで出てきたときに、フランスのモンパルナスのキキ(アリス・プラン)という、ユトリロやマン・レイのモデルだった女性の姿とイメージが重なり、思い出しました。キキが大勢舞台で踊っているようないでたちで、独特で美しかったです。
多くのシーンが途切れなく重なり続けていて、飽きさせない構成でした。ゆったりとした優雅な踊りや、道化役のような男女たちが繰り広げる楽しくて愉快な、からかっているような踊りのシーンが時々入っていました。
途中でフィナーレのように大勢、全員が出てきてワーッと踊って照明が消えた後に、またダンサーがポツリポツリと少しずつ出てきて盛り上がりました。何度も、もう終わるのかな、と思ってもまだ続いていたので、作品の最後をなかなか想像通りに期待させたようには終わらせないような作品でした。個性的で工夫されていて、面白かったです。
(2010年4月29日 リンカーンセンター)