アメリカン・バレエ・シアターのライジングスターとして注目を集める三宅啄未(20歳)にインタビュー
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ワールドレポート/ニューヨーク
インタビュー=針山真実
針山:三宅さんがバレエを始めたきっかけを教えてください。
三宅:地元の香川県で曾祖父が創立したダンススクールで祖母と母親からバレエを学びました。
針山:ご家族が指導者という環境はどうでしたか。
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三宅:たまに厳しい時もありました。家に帰ってからも「あそこはこうした方がいいね」など指導が続くときがありました。(苦笑い)
針山:ロイヤル・バレエ学校で学ばれましたよね。留学はどのように決まったのですか。
三宅:ユース・アメリカ・グランプリに出場してロイヤル・バレエ学校からスカラシップをいただきました。ロイヤル・バレエ学校に入ることがその頃の夢だったので嬉しかったです。13歳からロイヤル・バレエ学校で5年間学びました。
針山:ロイヤル・バレエ学校からアメリカン・バレエ・シアター(ABT)に入ることになった経緯を教えてください。
三宅:ロイヤル・バレエ学校のバレエ教師からアメリカン・バレエ・シアターのスタジオカンパニーに挑戦してみたら? と言われて、スタジオカンパニーのディレクターの連絡先をもらいました。
連絡をしてオーディションの許可をいただき、ニューヨークへ行くことになりました。3日間スタジオカンパニーのクラスを一緒に受けて、その3日目にディレクターのサシャ・ラデツキーから入団出来ると言っていただきました。嬉しかったです。2022年の6月にロイヤル・バレエ学校を卒業して、9月にニューヨークに来ました。
針山:スタジオカンパニーが始まってみてどうでしたか。
三宅:ロイヤル・バレエ学校とスケジュールは似ているところがあり、9時15分からバレエレッスン、その後、他のクラスがあったり、リハーサルがありました。でもリハーサルの量はロイヤル・バレエ学校よりも多くてパフォーマンスのためのリハーサルが続き、間の休憩時間も短いのは大変でした。年に2回スタジオカンパニーのツアー公演があり、地方でも踊らせてもらって、香港とフィリピン公演もありました。12月にはメインカンパニーの『くるみ割り人形』公演にも出演しました。
針山:三宅さんはスタジオカンパニーに入ってすぐに注目を集めていました。カンパニーのSNSでも頻繁に登場する姿を見ましたし、メインパートをいつも踊っていました。プレッシャーなどは感じましたか。
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三宅:いえ、特に感じていなかったです。とにかくキャスティングで与えられたことをやる、という感じです。
針山:スタジオカンパニーを経てメインカンパニー入団はどのように決まったのですか。
三宅:スタジオカンパニーからまずメインカンパニーのアペレンティスダンサーになるための研修オファーを頂いて、アペレンティスとしての研修期間が3か月ありました。
2023年の9月から11月にそのアペレンティス研修期間があり、途中でアメリカン・バレエ・シアターの芸術監督のスーザン・ジャフィーとのミーティングで、正式にアペレンティスダンサーになることが決まりました。そして今回のメットシーズンの『白鳥の湖』公演の時にアペレンティスからコール・ド・バレエになることが決まりました。
針山:そうすると今がまさに団員になりたてなのですね!
三宅:正式には来シーズンからがコール・ド・バレエとして開始なので、今はまだ団員としてはゼロ年目?という感じです(笑)。
針山:もうすでに『白鳥の湖』ではナポリ役に選ばれましたね。この踊りはABTではソリストが踊ることが多いですから、アペレンティスからすごい抜擢です。選ばれたときは驚きましたか。
三宅:入ったばかりで何が何だか分からない感じでしたが、キャスティングを見て自分が入っていて、「自分がやるんだ」という感じでした。周りのダンサーたちからは「たくみ、ナポリやるんだ!」と言われました。自分はとにかく言われたこと、与えられたことを練習してやるだけ、という感じです。
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針山:カンパニーのリハーサルはどのように行われるのですか。
三宅:『白鳥の湖』のナポリも、クラシック・バレエの演目は大体ABTにあるアーカイブ動画を見て、振付を自分でビデオから学びます。自分で振りを学んでリハーサルに臨みます。新しい作品や今回の『オネーギン』『ウルフ・ワークス』はダンサーたちみんなで振付を学びました。
針山:スタジオカンパニーとメインカンパニーではどんな違いがありますか。
三宅:スタジオカンパニーでは人数も少ないですし、先生達から指導をしてもらえましたが、メインカンパニーでは指導が少なく、教えてもらうということはあまりありません。
針山:特にメットシーズンは毎日公演が続きますし、作品も多いので大変ではありませんか。
三宅:楽しいです。そんなに大変と感じないです。自分はずっとリハーサルを見ていて、他のパートも覚えるくらいです。
今年の1月あたりに大体キャスティングが発表されて、リハーサルが始まりました。今回『ウルフ・ワークス』では第3キャストだったのですが急に踊ることになって出演しました。『ロミオとジュリエット』の2幕はリハーサルがほぼない状況でしたが出演しました。周りやパートナーを感じながら踊りました。
針山:新しく加わってバレエ団の雰囲気はどうですか。それから注目しているダンサーはいますか。
三宅:みんなとてもいいメンバーたちです。優しいですし良くしてもらっています。楽しいですし、仲良くさせてもらっているダンサーたちがいます。
凄いな、と思うのはプリンシパルのアラン・ベルです。彼のテクニックが凄いし踊りがキレイだと思います。そしてジェームズ・ホワイトサイド。ソリストのジェイク・ロクサンダーは世代も近いので刺激的です。
針山:バレエダンサーとしての課題や目標はありますか。
三宅:全部課題です。本当に全部が課題です。でも小さいときから思っていることは、すごいテクニックが出来るダンサーはたくさんいるけれど、そのすごいことをナチュラルに自然体に演技も含めて魅せられるダンサーになりたいです。
針山:最後にABTでの今後の目標は?
三宅:AABTのプリンシパルになりたいです!
終始、落ち着いて話す三宅さん。ときどき笑いも混じる和やかなインタビューとなりました。
カンパニーに入って数多くの振りを入れるのも大変とは感じない。急な出演も、リハーサルがほぼない状況の出演でも、大変ではないです、と淡々と話す。そして普通の人ならプレッシャーを感じるであろう大役の大抜擢にも慌てることなく、"与えられたことをやる"と話す落ち着き。
肝が据わっていてこれが大物になる人なんだろうと感じました。
彼がABTに来てすぐに、「これは誰!?」、「すごい子が来た!」と注目が集まり、アペレンティスで既にソリストと同役を踊るなど三宅さんは間違いなく期待の星。
プリンシパルになりたいです、と言った瞬間の顔はキリッと引き締まり決意が見えて堂々としていてカッコよかったです。ABTでの活躍がとても楽しみです。
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