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アントニオ・ガデス舞踊団『カルメン』<ロス・ファルーコ>のフラメンコ

Antonio Gades Company
Antonio Gades: Carmen
アントニオ・ガデス『カルメン』

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 毎年、ニューヨークにスペインからアーティストたちが集まるフラメンコ・フェスティバルが、今年もシティ・センターで行われました。これは「ニューヨークで最も重要なイベントのうちの1つ」とも言われているものです。私も毎年、このフラメンコ・フェスティバルは楽しみにしています。
プログラムの1つは、2月18日から20日まで上演されたアントニオ・ガデス舞踊団の『カルメン』です。18日だけは、報道関係者とスペイン大使館関係の方々のために上演され、私も観劇いたしました。(報道陣にはフラメンコのCDとフラメンコガイドのプレゼント付きでした。)
この『カルメン』は、ストーリー・振付・照明とも、アントニオ・ガデスとカルロス・サウラ(映画『カルメン』の監督)による作品です。1983年初演ですので、この作品の25周年の記念公演だそうです。
私もガデスの大ファンでしたので、スペイン留学中にも公演を拝見しました。今から12年以上前、留学前にサウラ監督の映画『カルメン』を見ました。この映画には、ガデスとクリスティーナ・オヨスが出演しています。ガデスは2004年に他界しましたが、日本びいきで時々来日していたので、今でも日本にはファンが多いこと思います。この作品では、がデスの振付などすべてが保存されて引き継がれています。

『カルメン』のストーリーは、本来はタバコ工場の工員のカルメンが男性と恋に落ちますが、途中で闘牛士のほうに恋をして、元彼を嫌いになって振ろうとして嫉妬されて刺し殺されてしまうお話です。情熱的で自分に忠実だった女性が原因の悲劇で、情熱的なスペインの女性像を表しています。ガデスの作品は、『カルメン』の舞台公演のリハーサル・シーンから始まります。 
舞台上の背景にたくさんの鏡が置かれていて、その前でフラメンコ・ダンサーたちがダンスレッスンを続けています。そしてガデス舞踊団の『カルメン』の本番が展開されていきます。
ギターと歌のフラメンコの生演奏が迫力充分でした。シアター形式ですので、土着的なフラメンコではないですが、アンダルシアの空気も味わえる洗練された公演でした。
主役は、カルメンがステラ・アラウソで、13歳でプロダンサーとなり、17歳でアントニオ・ガデス舞踊団に入りました。1988年から、クリスティーナ・オヨスからカルメン役を引き継いで現在に至ります。(カルメンを踊り続けて20年以上なのですね。)カルメンを嫉妬で殺してしまうドン・ホセ役は、アドリアン・ガリアです。
ラストはカルメンをドン・ホセが嫉妬して刺し殺してしまうシーンで盛り上がって、カルメンがパタッと倒れて全身を硬直させて息絶えて終わりました。そこでさっと照明が暗くなりました。ものすごい拍手で包まれました。
(1009年2月18日 シティ・センター)

Los Farruco
<ロス・ファルーコ>のフラメンコ・コンサート

こちらもフラメンコ・フェスティバルで、シティ・センターで行われた公演です。
ロス・ファルーコというのは、著名なフラメンコ・バイラオールだった今は亡きファルキートとファルーコ兄弟、そしてその孫で歴史的バイラオールのエル・ファルーコにより、ヒターノ独特のパワフルなアートであるショーを見せていたフラメンコ界の一族のことだそうです。ファルーコ一族は、生粋のスペイン・ヒターノの伝統に沿った本物の表現をしていて、その華麗なサパテアードとアクロバティックな動きで、伝説的にとてもよく知られていました。アントニオ・モントーヤ・フローレス(エル・ファルーコ)が1997年に亡くなった後は、彼らの家族に何世代にもわたって、彼のサパテアードの芸術が引き継がれています。

この舞台はすごい迫力でした。カンタオール3名、カンタオーレ(女性)1名と、ギタリスト2名の生演奏つきでした。打楽器は無しで、パルマとピト(指をパチパチ鳴らす)だけ。サパテアードの音が主だったので、本来のヒターノたちのフラメンコは打楽器無しなのかなとも思いました。
振付は即興の様子です。バイラオールは4名です。バイラオーラはラ・ファルーカ47歳、ラ・ファラオーナ49歳、バイラオールはファルーコ21歳、バルーリョ19歳です。最初はファルーコ、ファルーカ、バルーリョが3名出てきてアレグリーアスを踊りました。激しい踊りのバトルを繰り広げていました。
次はファラオーナがでてきてソロでタンゴ・デ・ラス・ニーニャスを踊りましたが、彼女はドラム缶のようにまるまる太った巨体でしたので、その身体でよく飛び跳ねたりサパテアードが踏めるなあと正直、驚きました。でもすごく盛り上がり、大喝采を受けていました。ゆさゆさと巨体で踊る姿は、とてもおちゃめで可愛く、愛嬌いっぱいで客席がみんな和んでいました。巨体で踊り続けるのは限界がある様子でしたので、ほとんどこの公演のメインは、他の3名の踊りで占められていました。若手のバルーリョはセギリージャをエネルギッシュに踊りました。次はファルーコがソレアをダイナミックに激しく踊りました。ファルーカはロマンセを色っぽく激しく踊りました。

次はまた全員が舞台上でハレオスを繰り広げていきました。そして順番に、ファルーコ、ファルーカ、バルーリョ3名がソロで展開されていきました。演目は少ないですが、それぞれの一人当たりの踊りが長くて、休憩なして、ノンストップで1時間半続きました。
彼らのフラメンコのサパテアードは、すさまじい迫力で、スペインのセビージャに旅行に行った時に現地のタブラオで観たのと同じような激しさでした。最初の始まりはとても静かなのですが、だんだんと激しく早くなっていって、早打ちになっていきます。リズムの刻み方もとても正確です。
カンタオーラの歌声の迫力もすごかったです。ダンサーに対してのハレオは、「オーレ!」、「エンセニャラ!」(やって見せてよ!)とか、「ファルーカ!」、「ファルーコ!」とか言っていました。
観てほんとによかったです! パワーをいただいて、とっても元気になりました。
(2009年2月22日午後 シティ・センター)

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