ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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 皆様、こんにちは。ニューヨークは、だんだん寒くなってきました。毎年恒例の、ニューヨーク・シティ・バレエの『くるみ割り人形』の公演も始まりました。1年が過ぎるのはあっという間ですね。

美しかった山海塾

 10月24日から29日まで、ブルックリンのBAMにて、山海塾の公演がありました。私は以前から山海塾の作品を一度観てみたかったので、この公演をとても楽しみにしていました。

 山海塾は、1975年に、天児牛大によって設立された舞踏カンパニーです。1980年から海外公演を始め、1982年からはパリ市立劇場を活動拠点にして2年に一作のペースで新作を発表し続けています。世界中で極めて高い評価を受け続けていて、40カ国をワールドツアーで周っています。
演出、振付、舞台セットデザイン、衣装デザインも全て、総合的に天児牛大が制作しています。

 
彼らは暗黒舞踏を継承していますが、以前観た他の舞踏カンパニーのようにオドロオドロしいものは感じられませんでした。日本が生んだ舞踏の流れは受けていても、彼らなりにそれを発展、昇華させていて、独自のカラーがあります。彼らの公演は、とても美しかったので驚きました。

 今回の公演は、『かがみの隠喩の彼方へ~かげみ』。2000年のパリ市立劇場との共同プロデュース作品です。1時間25分休憩無しの作品でした。
舞台天井には、大きなハスの葉がたくさん浮いていて、仮想の水面を表しています。その水面からはるか下で息づく生命たちを表現しています。水面から来る穏やかな光と影の様子がとても美しかったです。ダンサーは7人で、天児牛大本人も出演していて、彼のソロのシーンもたくさんありました。
彼の振付には、すべて深い意味が隠されているそうなので、一挙一動を注意して見守りました。ダンサーは全員無表情で踊り続け、時々苦しみの顔で「アー」と大きく口を開けたまま踊っていました。



 
最後には、天井のハスの葉が、ゆっくりゆっくりと降りてきて、舞台地面に着きます。その下にダンサーたちがいて動き、最後はハスの葉の間に寝そべって終わります。これは、水面のハスに向かって、下の生命たちが、上に上っていく様子を表しているのでしょう。このハイライトが一番美しく感じて感動的で、観客は「ワー」とか「ウー」などと、小さくどよめいていました。

ダンサーたちは、顔も頭も体も、全身白塗りで、衣装は肌色っぽいものや白っぽいものばかりでした。ダンサーは全員男性なのですが、白塗りで踊っているところを見ていると、男性的でもあり、女性的でもあり、老人のようにも見えるし、幼い子供のようにも見えました。欧米に比べて貧弱な日本人の体型は、ダンサーとして不利に働くことも多いのですが、彼らのメイク、衣装、振付は、日本人の体型をとても生かしていて、すべてにおいてキマッていたので、びっくりしました。これは、日本人ダンサーだからこそ、美しくキマッた作品だと思いました。他の人種のダンサーたちが同じ作品を演じても、決して似合わないです。何事も生かし方次第で、短所を長所として生かしていくことができるのだなあと、気付き、学ばされました。
公演が終わった時、客席はほとんど立ち上がって、ずっと拍手を送り続けました。