ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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 皆様、こんにちは。ニューヨークは、つい最近まで肌寒かったのですが、5月終わりごろになってからようやく暖かくなってきました。やっと過ごしやすい季節になって嬉しいです。  さて、今月号は、ニューヨークでは、ダンス公演真っ盛りのシーズン。良い公演が目白押しでした。これから夏にかけて、たくさんのダンス公演があります。どれを観ようか、迷うくらいです。ABTの公演シーズンも5月22日から始まりました。こちらは、来月号にレポートします。

ザ・フォーサイス・カンパニー

 5月2日から6日までBAMにて、振付家ウィリアム・フォーサイス率いる、ザ・フォーサイス・カンパニーの『Kammer/Kammer』の公演がありました。ステージ、照明、コスチュームデザインはウィリアム・フォーサイス自身です。ダンサーの中には、日本人の安藤洋子さんの姿もありました。

 ウィリアム・フォーサイスの振付が観られる、と楽しみにしていたのですが、フタを開けてみると、これはダンス作品ではなく、まるで演劇作品でした。ビデオ、ライブビデオなどを使って現代的なマルチメディアを作品に取り入れようとした様子です。実験的なことをしたかったのでしょうね。舞台上を4つくらいの小さな部屋に分けて、それぞれが1つの部屋としてセットが作られ、その中で主に2人の役者が移動しながらそれぞれの場面を演じていました。この2人の男女の役者が主人公で、彼らはダンスなしの演劇をしていて、セリフと演技がずっと続いていました。芝居の内容は、2つのゲイのラブストーリーでテーマとしてはあまり面白いものではありませんでした。

 ダンサーたちは18人もいたにもかかわらず、彼らが何をやっていたかというと、ちゃんとした振付は全く無しで、即興で、2人の役者が演技している周りで、動いているだけでした。その動きは、フォーサイス特有の、足の関節を開けたり閉じたりしながらカクカクと動くものです。

 今回も、私は、ダンス公演を期待して観に行ったので、全く振付がない、シアターだったということが分かり、とてもがっかりしました。きっと、振付家として著名なフォーサイスの振付を楽しみにして来ていた人たちは他にも大勢いたことでしょうし、がっかりした人も多かったと思います。だんだんと、途中で席を立って帰ってしまう人々が大勢見受けられました。上演中にもかかわらず、あっちでもこっちでも、どんどんと席を立って帰っていく人が続出しました。観客の目は、厳しいですね。別の日にこの公演を観た私の友人も、「とてもがっかりした。お金を払って観に行く意味が全くなかった」と言って嘆いていました。

 著名な振付家が、自分の振付家としての看板を掲げて、肝心の振付が全く無い作品、それも実験的な演劇作品を上演するなんてことは、前代未聞なのではないでしょうか? 振付がゼロ!というのは、ひどいと思いました。観客は、彼の新しい振付作品が観たかったはずです。せめて、演劇を混ぜてもいいので、一部分新しい振付を使ったダンスのシーンも入れて、ダンスの要素も強く打ち出して舞台を作ったほうがよかったのではないかと感じました。振付家は、観客のために、ダンスの振付に力を入れてほしいです。

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